水に願いがあるなら、あのときのあれはなにかをかなえた水だったのかそれは立ち尽くして。
うたっていた。
ありとあらゆる表面でうたっていた。
過ぎ去り過ぎ去り過ぎ去りし日々に空を見上げ、ながいあいだ無数の鳥の囀りを聴き続けていたもののうたううたを。
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「すてきなタイトルにしてくださいね」と言うと『すてきなタイトル』と付けてくるような人に「結婚してください」と言ったら「はい」と答えてくれたが、そのままどこかに行ってしまい、戻ってきたと思ったら「結婚してきました」と言う。誰とよ。
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接続詞の対義語を拾い上げたとき、裏側に付着した見知らぬ助詞を見つける。それを剥ぎ取るための道具を表す名詞を、考えている人の横顔を想像している人の横顔を見つめる私の横顔。
ひとつのあたらしい言葉は、それと繋がり得るあらゆる言葉を震わせ燦めかせる万華鏡。
いくつかのあたらしい言葉は、たがいを眺め合い万華鏡を映す万華鏡。
そのときの空。
空のごとく架かり、ぬるみながら垂れ下がる雲底のように降りてくるものそれはひとりの脳裏には浮かべることのできないそれまでのすべての言葉を枕詞とするたったひとつの
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雪雪さん。 <br>本を置いていきます。 <br>「冬の物語」イサク・ディネセン(新潮社) <br>カレン・ブリクセンの「冬物語」の新しい訳出で、収録作が全て同じなのかは、今日初めて手にとった本であり作家であるので知らないのですが、後書きを読むに原書は同じものと思われます。 <br>置いて帰れずに、当初の本をすべて減らしました。 <br> <br>私信を、好奇心に基づいて記した記録として、たぶん2月の半ば頃に。 <br> <br>のどごしの美しい掌編をありがとうございます。