_ 今日は誕生日
知らない誰かの誕生日
その人も知らない誰かの誕生日
その人が知っている誰かの誕生日ではない日
誕生日ではない日
ぼくの
ぼくの知ってる人の
ぼくの知らない人の
誕生日ではない日
そしてそんな人々がぜんぶいなくなっても
人類が滅びてからも
来る日も来る日も
ぜんぶ誰かの誕生日
ではある
おめでとう!
パーティはないけど
平和をプレゼントしてあげよう
_ 『八本脚の蝶』、初版部数がけっして多くはないので、書店店頭では見つかりにくい状況のようです。
現時点ではビーケーワンがいちばん確実だと思います。奥歯さんと生前親交があった東雅夫さんが、bk1とタイアップして『幻妖ブックブログ』を運営していらっしゃるので、東さんの尽力により在庫は日本一潤沢なはずです。東さんと担当編集者の斉藤尚美さんの随想が、購入特典として付きます。
21日付bk1の総合ランキングでは、二位になっています。すごいなあ。素直に驚き。他の書店では、なにが起こっているのかほとんど気付いていないのではないでしょうか。ずっと気付かれないままで、口コミだけで売れてゆくのがいい、という気もしますけれども。
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ところで、bk1で購入された方から「本は届いたけれど、特典はどうしたのですか?」という問い合わせが、どういうわけかぼくのところにいくつか来ています。
後日メールで届くはずです。同封忘れではありません。東さんよろしくお願いします。
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うちの店では新刊配本がなく、事前に手配してありましたが、店頭に並ぶのは24日になります。どの本屋かわからんと思いますが、一月末、仙台で『八本脚の蝶』をどかっと積んでいる書店を見かけたら、まずまちがいなくそこです。
うちで買っていただいても特典は付きませんが、ぼくがすごくうれしいので、よろしくお願いします。
◆旅先が旅する国で◆
風が向きを変え潮の香が漂ってくると国土が船であったことを思い出すのです。
積荷である私達のたましいは、今生のうちに無事売却されるものかはさだかでありませんが、水平線に沈むときの太陽はべったりとして、日一日と大きくなっております。
右舷の廃墟に残った三半規管塔にのぼって、太陽のたるんだ脇腹のあたりに眼をこらせば、茫漠たる意味の碑文をあらわす鳥肌が、眼に入る砂のようにごろごろと読めましたし、吹くものは風であるとは限らず、塔のぐるりをめぐる階段を降りる私の足元で触れもしない土埃が縦に舞い上がるのは、片隅で心が乱れているせいでした。
傾く空からこぼれてくる羽ばたく水のようなあおじろい媒質を呑めば、膨らむ肺に撓められた私の肋が発情期のさえずりでほころぶのが聴こえます。右半身だけは春で。たんたんと階段を踏むようにぬるんで。
寄せることばと飛び立つことばが擦れ違って、なかぞらのあたりでずるずるっと体側をこすりあう感触は私の腋のあたりにもさんさんと滲んで参ります。漂う触覚。それは風と区別がつかず。
「もう教えることはなにもないよ」
言って眠りについた森を抜ける頃、東北東に嵐のけはいして、私の肺のなかにもして、ざわめくのは血流に揉まれ旅する街々。
外で行き着き、内で行き着くその先に、名前の綴りはおなじふたつのものが待ち。
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