_ あまりにも忙しい。スタッフ足りません。本が好きで本屋で働きたい人、近くにいませんか。
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_ 高田大介『図書館の魔女』(講談社)。
結構としてはハイファンタジィであって舞台は異世界なのだが、文化的歴史的に我々の世界と重なるところがある。異世界に現世風の人名や風物がしれっと登場すると、違和感を感じることがままあるが、この物語ではもっとラディカルに我々の知る言語や文物や歴史上の人物が、そのまんまの意味と形式で登場する。漢字、ラテン語、プトレマイオス、『宿曜経』、『エメラルドタブレット』。量子論の多世界解釈的にはそれもありということか、この設定あるがゆえ、言語学や書誌学のディープな議論が前置きなしでできるという大きな利点がある。ハイを徹底して、漢字にあたる架空の文字体系や、プトレマイオスにあたる架空の人物を一から設定していたら、ページがいくらあっても足りないからなあ。
これは作者が、書きたいことを思いっ切り書くために設定された世界であり、それだけに作中でキャラが捏ね回す理屈は、微に入り細に穿ってたいへん読み応えがある。
書物や言語に関しては、僕も平素からいろいろと考えている。関心のあるテーマで思いも寄らぬことを言われるのも楽しいが、この物語ではむしろ「それだ。それを俺も言いたかった!」という胸のすく思いを幾度も味わった。
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キャラに魅力があり、キャラどうしの掛け合いや絡みが楽しい。
彼らとおなじ部屋に、自分もいるみたいだ。部屋の隅の暗がりに佇んで、いきなりおもしろいことを言われても吹いたりしないように、じっと息を潜めて。
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序盤展開が遅く、ふつうの長編一本分ぐらい読んでも、話が図書館の塔とその周辺から出かけてゆかないのでこれはどうなることかと心配になるが、上巻終盤から、緻密に構築されたキャラが次々と羽ばたき始め、日本ファンタジー史上屈指の高みまで飛翔する。
クーンツあたりならフィニッシュしてしまうであろうクライマックス以後、あのキャラはどうしてこのキャラはどうしたという後日談にかなり紙幅がさかれて、盛り上がった読後感が鎮静するが、キャラに強みがあるこの物語ならこの破格の構成もありだと思った。
続編も読まされてしまうだろう。だって、あの人やあの人やあの人やあの人がどうなってゆくのか気になるもん。
願わくば文体がもっと磨かれて、マキリップ水準とか山尾悠子水準に達してくれれば。あるいは描写がしつこいくらい丹念なので、マーヴィン・ピーク水準かな。
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書物や言語に対する知見が物語を駆動するファンタジーは数多いが、その手のものでは個人的には妹尾ゆふ子『真世の王』以来の傑作でした。
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_ 三秋縋『三日間の幸福』(メディアワークス文庫)。
斬新な設定のもと、新鮮な物語が展開する。四の五の言いたくなる僕が、めずらしく四の五の言いたくない。
感動した。
これは映像化されそうな気がするが、二人ないし三人の主要登場人物に誰をキャスティングするか、非常に悩ましい。自分が役者だったら是非やりたい。自分が監督だったら是非撮りたい。
この物語がどのように展開して、どのように着地するのか、予断なくお読みいただきたい。内容に言及したレビューなどチェックしないで。
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_ はやかつ [選評はお早めに!(といっても既に期限過ぎてますがw) 遅刻宣言した私がポストしたら、そのあたりが潮時ですので遅れな..]
_ 寝仔 [三秋縋さん(げんふうけいの人)2chで前に「あおぞらとくもりぞら」を読んで幸福なきもちになったので雪雪さんがとりあげ..]
_ 雪雪 [>はやかつさん その節はありがとうございます。貴重なアドバイスでした。 >寝仔さん 近かったらよかったなあ..]