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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-10-02 門のように見えるひまわり

_ 「ここはどこだろう」とひとりごちると、「どこでもない場所です」とその場所が答える。

こんなことが前にもあったけれども、それは記憶ではない。

「ぼくは誰だろう」という疑問が浮かび「誰でもない者です」とその疑問が答える。

こんなことが前にもあったはずだが、それは判断ではない。

このあたりに意味があったのは前のことだったか先のことだったか。

記憶をまだらに失ってから、それまで記憶の向こうに隠れていたものが、木洩れ陽のように目に立つようになった。

.

無意味ということにも逃れようもなく意味が付随してくる。窪みがあれば水が流れ込んでくるように。常ならば。

けれどこの記憶のまだらには、意味は足を踏み入れない。

密封されているわけでもなく、撥ね退けるちからがはたらいているでもない。

楽に、のんべんだらりと脱力したまま、のどかに無意味でいる。

そこのところだけ、もう死んでしまったのでなにも気に病むことがない、というふうに楽だ。

日常寄りの苦しくて辛抱たまらんところと、どうということもなくぴくりともしない安楽のコントラストがおもしろい模様になっている。無意味じたいは無意味だが、無意味のほとりで無意味に気付いている意味たちがマスゲームのように反復流動するので、風に揺れる花びらだけで花芯のないひまわりが咲き誇っている野原のようだ。

.

でもどうせ、なにか出てくる。

じきに無意味の中からなにか出てくる。そういう気がする。

無意味から無意味が出てくるとそれは有意味になってしまうのかもしれないし、じゃなければ、この花の存在しない花粉を媒介する虫のように、意味と無意味の間隙からぶんぶんいってあらわれるのかもしれない。

.

もう勘弁して欲しいと思いながら、わくわくしている。

なんだかとても疲れてしまったが、期待している。無知の力は常に既知の力を凌ぐので、原則として好奇心は尽きることができない。

よい匂いの野原で無意味の花輪を編みながら、眼もうつろに呆然としたまま、興奮に頬を赤らめている。

.

しかしあっちいなぁ。

ここ数年、頭の中の野原はずっと夏。雪が降っても夏。何年も生きた蝉は、疲れ切って沈黙している。


2004-10-22 叙景集

_ 613

鏡を見ているとき、くしゃみをしたら、顔に唾がふりかかってきたので、自分のほうが鏡像で、なるほど周囲に奥行きがないことに気付く。 鏡の向こうのあたしが鏡の前から歩み去ったら、どうなってしまうのかなあたしは。

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_ 614

『階段』という名の本があり、大きくて縦に長い。積み上げると、階段として登ってゆくことができる。

ぼくは『階段』の三八巻目に腰掛け、三九巻を読んでいる。おはなしも少しずつズレながら高まってゆくのだ身も心も登るのだ。

好天にめぐまれて、異様にすがすがしい風が吹き渡る。

読み終えるとぼくは、『階段』を少しくだって向き直り、三八巻のうえに三九巻を置く。Yの字になってしみじみと深呼吸したのち、四〇巻を買いにいく。

北の空に、女の子がひとり浮かんでいる。『階段』の一冊に寝そべり、その次の巻を読んでいる。あれは何巻目あたりだろうか。ぼくが読んでいるよりだいぶ先のほうだ。途中からいきなり読み始めたのかなあ。ではなくて、図書館から二冊ずつ借りてきているのかもしれないけど。だったらいいけど。

.

_ 615

病棟の白い廊下の窓際で「こちらが骨で啼く鳥の声」と紹介を受ける。

窓に切り抜かれた陽光がはらりと床に落ちている。おなじ位置にあるふりをしながら、それとわからない速さで横滑りしてゆく。

「刻限」、という文字。

この状況のすべてが、複雑なつくりの「刻限」という文字。

声を、紹介してくれた白衣の叔父の、掌だけがひらめき、文字の読まれる時代を百年進める。

一瞬、日付の擦過する音。

叔父さん叔父さんその手を気をつけて戻さないと、窓の外でいまは、なんの意志もあらわさずにいる季節が一秒の基準であることをやめてしまうかも知れない。

その忠告は、頭上の蛍光灯にかかる蜘蛛の巣に託した。蛍光灯のまたたきと蜘蛛の巣のかかわりに託したはずの、

あれを

視界に入れて、

叔父さん。

はやく。


2004-10-23 幅があり長さのない橋

_ 嗅ぐように読む

見るようにではなく

成分を

ことばの成分を粘膜に受け止める

目で照らすのではなく

粘液に

ことばが

溶け込むときには粘液もことばに溶け込む

.

次第に

私は語られてゆく

物語として伝えられるのではなく

語られる息として吐かれる

書き残されることのないものとして

しばしさまよい

そして嗅がれるならば

なにかが鼻を突くときのように

硬度も鋭利さも意図もなく

突き刺す

嗅ぎ返すならば自分も

刺される

臭跡の橋上の

一瞬の

嗅界

.

ただ一文字として読まれるための詩

.

ふるわれるのではない暴力

ただ受ける側だけの暴力

どこからも発せず

ここに到る橋を渡って

一瞬を

はるばる訪れる暴力

いまいるここに到達するための

はかり知れぬ速度

けっして記憶できない暴力

.

生きているということ

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