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雪雪/醒めてみれば空耳

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2005-11-03 眼を閉じた薔薇

_ 川を渡る熊のような薔薇が降る

.

軌跡が

粘る光のように尾をひいて

仰向けに身を沈める

.

川が

折り重なる花弁のあいだに滑り込んで

頬擦りほどのちからで押し広げる

.

夜の背の

尾根に降り立ち

筋肉のなぶりあう溝をなぞり

走る舌先に汗をため

我が身をなすりつけるむずかりに沿い蛇行する

なにかを拒むように首を振って

.

星屑に向かって大地が落ちていけば

星屑は流れ星に見えるだろう

.

雨をまねる大地のように

薔薇に降る

所定の時刻に気取られぬうちに

臭跡の糸を張り渡す

爪で

繊維の縮みゆく虹のかたちの

思い出させるあの日の告知の

届くまでの中腰

跳ね上げるための

.

眼を閉じていたよね薔薇

でも歯の隙間から入れた

出るときは

液として沁み出た

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2005-11-04 通り雨、と言うときのような通り道

_ 自力で思いつくか思いつかないか、ぎりぎりの境界を少しだけ越えたあたりの着想が、もっとも人を驚かせる。

それより遠い着想は、心を揺さぶることもなく過ぎ去ってしまい、惜しまれることもなく消える。もっと遠ければ、なにかに届いたことさえ当人に気づかせない。

引き起こされる感動を指標とする限り、一生に一度、とある一瞬だけ眼の端をよぎって去るようなかすかな着想を捕捉することはできない。思考は、ふだん自覚されない慣性にしたがって運ばれているから、追おうとすればその慣性に逆らって、急激に加速しなければならない。けれども心が掻き立てられなければ、興奮による集中力は動員されないし、着想を追尾する加速力も発揮されない。

ゆえに、「今まさに、驚くべきときである」という判断により、意図的に自分を感動させる必要がある。それは困難である。習熟によって、随意の度合いは多少上がるにせよ。

追尾が不能であるとき、遠ざかる着想にぼくは、名前を付ける。ただひびきだけを似合わせたあたらしい固有名詞を。そしてその名を書き留めておく。おりおりに、名前がなじむよう、心の中で反芻する。名前が定着すればその呼び名の対象は、果てしない闇の中で無意識が交わす、噂話の種になる。

.

ある日、やはり取り急ぎ名前を付けなければならないような影の薄い着想が、予告もなく訪ねてきて、くだんの名前を唱える。

「会いたいんでしょう?」

「会いたい」

ぼくはそのときしていたことはぜんぶ放り出して自分を身軽にする。

すでに流れ始めながら案内人は、振り返って言う。

「遠いから、心に鍵をかけてきたほうがいいわ」


2005-11-05 叙景集

_ 624

東に向かえと言われて東を目差して歩いていたが、考え事にひたっているうち通り過ぎてしまい東に向かって引き返す。

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_ 625

地下鉄に肩を叩かれる。

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_ 626

時計たちの慣習では十二時間が一年にあたる。

午前と午後に一度ずつ、誕生時を祝う。

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_ 627

どんな悲しいことがあったのかは知らない。二度と3時22分を差したくない時計が、針のすすみをこらえている。

内部機構が歯を食いしばる音がする。3時21分にしばらく踏み止まっている。

長針の先はふるえはじめ、たちまち見えなくなるほどの周期で唸る。みずからの唸りが、触れられることのできるすべての部分をくすぐる。

文字盤が一瞬泣き笑いをして、力尽きた長針が一気に55分まで跳ね上がる。

そのいきおいで、投石器から放たれる石のように聴こえない苦鳴がすっ飛んでいったのは見たが、床をからころと走ってベッドの下に転がり込んでいったところは見逃す。

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_ 628

ノーベル初恋賞をもらった人の、二番目の恋人になる。


2005-11-06 柔軟と睡眠

_ いつも動かさない方向に関節が曲がる

筋肉がとまどうしぐさで伸展し

座り込んだ血液が首っ玉をつかまれて血管のなかを転げてゆくあいだ

骨はただ隣の骨とキスをする角度や強度を試してみているだけ

脳は全員の相談に乗るがあまり当てにされていなくて

眠っているあいだは業務時間外で

うじうじ自分の相談に乗る

自分の相談に乗っているときは人が変わったようにスピードを出す

なにもかも飽き飽きしている力で

自分を自分のすこし前方に突き飛ばす


2005-11-07 雷雲の裏の青空

_ ベクシンスキーが亡くなったのを、最近まで知らずにいた。

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悲鳴や苦悶を画に描いたような、大切な人の生傷を嗅がされるような、暗い画風だった。そういう部分を前面に押し出した画は、あまり好きではないんだけれど、ベクシンスキーの場合は、苦痛を、祈りのように描く。彼方まで届いて、せめて神の肌を傷付けようとする刃のような祈り。その無謀で禍々しい壮大さが好きだった。

ものすごく怖がりだったのに、無惨な殺され方をした。まるでバチが当たったみたいに。

(―死ぬのは怖くない。死ぬまでの過程が怖い。死ぬまでに長く恐怖と苦痛を味わうような死に方はしたくない。死ぬと気付かないうちに死にたい―生前そのように語っているのを、どこかで読んだ気がする)

神様の価値観は人間とは異なっており。

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追悼ということで、エディシオントレヴィルから唯一の邦訳画集が復刊されている。持っている洋書と、だいぶ作品がかぶっているので迷っているのだがやはり素晴らしい。

しっとりして肉感的なのに、ざらざらに荒涼として。

耳が聴こえず眼も見えず雷についての知識もない人が察する雷のけはい。そういうひびきが腹に溜まる。そして荒天がそうであるように、おどろおどろしさにかすれて消えがてな爽やかさが、ふと鼻の奥を冷たくする。


2005-11-10 叙景集

_ 629

耳の穴のなかに座って、音が鼓膜に触れる音を聴く。

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_ 630

月が満ち欠けを繰り返すのは遺伝でしょうか環境でしょうか。

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_ 631

雨雲が、無数の銀の杖をついて歩いてゆく。

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_ 632

額縁をくぐり抜けてきたみたいだったよ、二階の窓から降りてきた君。

絵の中を、抜け出してきたのか入ってきたのか。

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_ 633

木もおだてれば、豚が登ることを承諾してくれる可能性は皆無ではない。

事前に可能性をおだてておけば。

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_ 634

見つめあい、いちにのさんで鳥肌を立てる。

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