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雪雪/醒めてみれば空耳

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2005-11-05 叙景集

_ 624

東に向かえと言われて東を目差して歩いていたが、考え事にひたっているうち通り過ぎてしまい東に向かって引き返す。

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_ 625

地下鉄に肩を叩かれる。

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_ 626

時計たちの慣習では十二時間が一年にあたる。

午前と午後に一度ずつ、誕生時を祝う。

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_ 627

どんな悲しいことがあったのかは知らない。二度と3時22分を差したくない時計が、針のすすみをこらえている。

内部機構が歯を食いしばる音がする。3時21分にしばらく踏み止まっている。

長針の先はふるえはじめ、たちまち見えなくなるほどの周期で唸る。みずからの唸りが、触れられることのできるすべての部分をくすぐる。

文字盤が一瞬泣き笑いをして、力尽きた長針が一気に55分まで跳ね上がる。

そのいきおいで、投石器から放たれる石のように聴こえない苦鳴がすっ飛んでいったのは見たが、床をからころと走ってベッドの下に転がり込んでいったところは見逃す。

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_ 628

ノーベル初恋賞をもらった人の、二番目の恋人になる。