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雪雪/醒めてみれば空耳

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2007-08-02 カレンダーにしるしを付けるなんていつ以来だろう

_ 木地さんは恋人でもなんでもないのだが、これは恋人の帰りを指折り待つ気分に似ている。心が乱れる。胸苦しい。二ヶ月と少しか。長いな。溜息をつきながら待つか。

木地雅映子『悦楽の園』。650枚。『氷の海のガレオン』とおなじジャイブから、10月5日予定だそうである。

期待は表明しない。なんでもいいよ。出てくれれば。

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複雑な気分でひと口には言い難いのだが、ぼくは木地雅映子を読めることがうれしいのだが、どうも、どこかで誰かに読まれるということが、おなじくらいうれしいようだ。

みんなどう思っているか知らないが、木地雅映子を好きな人はおおむね、木地雅映子を好きな人を好きなのではないだろうか。ちがうかな。

率直に言って、木地雅映子より力量的に優れた作家はたくさんいるけれども、こんな照れ臭い作家はこの人だけだ。むろん、ぼくにとって、ということだが。自分宛の手紙を、誰かに読まれるときの気分にも、似ている。自分のために書いてくれているような、気がするんだよ。ほんとうはそうじゃなくてもね。

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この文章ぜんたいが、上っ調子に聴こえるかもしれないが、かと言ってうきうきしているわけではない。読む前からすでに、疲れてもいる。それはやはり、期待なのかもしれない。不安を伴わざるを得ない期待。

出ないかなと、いつも思っていたのに、ほんとうに出ると知ると、すっかり気分がちがってしまった。二ヵ月後、ほんとうに読んだら、また、ぜんぜんちがう気分になるのかもしれない。

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今日は公休で好天だったので自転車で大玉村まで行った。福島市まで31キロという表示のところで引き返して、本宮町を通っているとき夕方になり、道沿いの樹々から蝉の声が、横殴りの豪雨のように湧き起こった。

声の雨を突っ切るように走りながら、この大量の蝉たちの一匹たりとも、『悦楽の園』が読める日までは生きられないという分かり切ったことに、どうしてか驚く。

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2007-08-20 叙景集

_ 815

墨のような海から、とぱん、とぱん、とぱんと花火が上がる。そのあかるみに、数艘並んだ小舟が浮かび上がる。花火はもよもよと重たく、ゆっくり広がりゆっくり消える。闇に滲むようにかすれて、流れない煙のようにしばし中空に留まる。

こういう祭りにときどきくる。ふとした拍子にくる。

出店に交接の姿勢の、けだもののおもちゃがあり、空気圧で腰を動かす。長く見本を務めてきたせいで、手垢と埃でぜんたいにすすけて見える。出入りするペニスだけ、瑞々しく光沢を保っている。

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_ 816

降る雪が隣りの雪にぶつかる音を録音する技術を、音もなく開発している村までは、駅からだいぶ歩く。

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_ 817

くるはずの風景がこない。風景に刷かれるはずの青がたたらを踏んで知覚野に雪崩れ込んでくる溢れる。雲よりも前にある空の印象。速度のある濡れた青のにおいが眼の奥で涙に染みる。右の肩口からよじれるように羽根が、羽ばたく回数のぶん折り重なって飛び立ってゆく。まるで日々の、晴れた日の、青い冬の、立ち昇る冬の階段。ほつれゆく陰翳のある周回する白い虹。霜の重みに耐えかねて崩折れる固体の稲妻。

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_ 818

すべての文字は、その文字じしんであると同時に、「文字」という意味の象形文字である。

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_ 819

過去をそなえていまさっき生まれた。戦いはなかったことになった。瓦礫と死骸を片付けてしまえば、日付けは変わり、日付けが変わるさだめも変わる。すべての時計が軋んでいる。見知らぬ時間を拒んで。

凝固するより早く流出する血液のように、時間が、その肉体だった世界から流出してゆく。

血のにおいは、血である。拡散しているだけで。

時間のにおいもまた時間であり、今までにおいだけを時間そのものだと思っていた私たちを、溢れる時間が濡らす。漂っていたものを流れだと思っていた私たちは、ひたすら流れ去るものと思っていた時間とともに流れる。

灯台のように遠景を通り過ぎるのは誰の指か。関節があり屈曲を予想させるがゆえ塔のように見える点。

いまや離れて眺めることのできる現在の、それが輪郭だとすれば輪郭の定義を変えなけらばならないただちに。

遠ざかりつつあるのに離れてはいかない「ただち」にて。

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