_ あなたがまだこの世にいなかったころ
私もまだこの世にいなかったけれど
私たちはいっしょに嗅いだ
曇り空を稲妻が走ったときの空気の匂いを
そして知ったのだ
いつか突然に私たちの出会う日がくると
この世の何の変哲もない街角で
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(未生 谷川俊太郎)
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_ だいぶん間があいたけれども、前回中途になった『ぼくはこうやって詩を書いてきた』の話。谷川俊太郎は著書が多いから、このタイトルから推測される内容とかぶりそうな本も何冊かあるわけでまあそういうものだろうと高をくくっていたところはたして案に相違した。よいほうに。
届いた現物が、A5判736ページという辞書なみの代物。
もっとも親交の深い編集者である山田馨氏によって長いキャリアから選ばれた88編の詩(最初の一編は、なんと小学校五年の授業で書いた詩、二編目は十六歳。当然未発表)を肴に、谷川氏と山田氏が、一杯やりながらいいこんころもちでダベる。書物のスクエアな外見に反して中味はほとほとぐだぐだで、フォーマルな設定の座談では出てこない迂闊で危うい味わいがたまりません。
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話題は谷川氏のプライベートにもずかずか踏み込んでいく。というのも、88編は世評の高い代表作というよりも、変転してゆく詩人谷川俊太郎の転機を象徴する作品という観点で選ばれていて、詩人の実人生における出会いや別れ、心境や環境の変化がどのように反映しているかということが話題の軸になるからである。付き合いが長く、痛い腹も痛くない腹も探ることができる山田氏だからこそ可能な切り口。そして対象が谷川氏だからこそ可能な切り口。現代詩の現況では、公刊された詩集がある詩人でもよりによったら88編選ぶとほぼ全詩集になっちゃいますから。そもそも詩人自身の、パブリックイメージがないし。
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知らなかった情報も満載。キャリアで一度だけ到達したミリオンセラーの話が出る。当世100万部売れれば一世を風靡した感じになるし、タイトルを挙げれば「あー、あったねえ」となるものである。
100万部アイテムをひとつも持ってない人気作家や一流出版社はざらであって、さらばもっとも本が売れる詩人である谷川俊太郎といえども「100万部?そんなのあったっけ」というのが大方の印象ではないか。
わかります? あれですよあれ。とかなんとか言ってここはタイトルを明かさずにおきますけれども。
(冒頭の詩は、あまりも短く緊密で、部分を取り出しようがなく、あえて全文を引用しました)
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_ 寝仔 [おはようございます。 少し動けるようになったかなという気配がありまして、6月と7月の雪雪さんのお店にいらっしゃる、..]
_ 寝仔 [雪雪さん、こんばんは。 どうも新幹線に乗ると私のお化けだけがそちらに着きそうな停滞期です。 様々予定の落ち着くか..]
_ 寝仔 [雪雪さんはたぶん、御自身の思考と言葉の走りかた、飛行のしかた、跳躍のしかた、現在の人口に膾炙している物理範囲での比喩..]
_ 雪雪 [寝仔さん、いろいろありがとう。 あなたの言葉を読んでいると、ふと我に返ります。 調子が整いますよう祈っております..]
_ 寝仔 [雪雪さん、ありがとうございます。 了解いたしましたの事後報告です。 適度に、落ちないように自転車を漕ぐような感じ..]