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雪雪/醒めてみれば空耳

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2015-10-07 亀裂の向こうの、眼に沁みる青空

_ 9月3日のコメント欄で安良岡さんに振られたたのをきっかけに、遠い目で児童に遡行してみました。

私的な、児童文学オールタイムベスト12です。ご参考まで。10におさめたかったのですが、無理でした。

入手困難なものが多くなりましたが、それでこそ僕のようなものが語る意味がある気がします。どこかで「あっ!自分の他にもこれを好きな人がいる!」と思ってもらったりすることが、なにかのきっかけになるかもしれなくて、こんな工合で。

児童文学とジュブナイルとYAとラノベの境界は微妙ですが、「どれかと言ったら児童文学!」というにおいのものに限りました。やっぱり微妙だけど。

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①『オレンジ党と黒い釜』天沢退二郎  復刊ドットコム

団地や造成地や立て札や水溜まり。なにげない風景点景があやしさを帯びて、歩いているだけでさくっとするのは、大人になる前に天沢に出会ったせいだ。

作品の完成度よりも、受けた影響の生涯にわたる大きさを思えば、ぱっと見不動の一位。

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②『魔法使いの伝記』佐野美津男  小峰書店

この本で神や人生について、とても大事なことを学んだ。その後いろいろいろな方法でいろいろなことを経験し学び悟ったが、この本で学んだことは、別途学ぶ機会はなかった気がする。場合によっては不動の一位。

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③『ザ・ギバー』ロイス・ローリー  講談社

ここは旧版で。翻訳の差は微細。しかし決定的(とはいえ新評論版もわるいわけではない。講談社版が見つかるまで読むのを我慢すべき、という種類の差ではない)。

先験的に認識できないことの認識の可能性について、つまり不可能が可能になることについて、思いも寄らぬ角度に亀裂が入り、光が漏れ出してきた。それはある種の希望。そこは岩盤ではなかった。壁なんだ、という希望。こんな経験は他では得られない。実は不動の一位。

(しかし、web上にいくつか、おそろしいネタバレコメントがあるなあ。この比類無き貴重な読書経験を台無しする爆弾が。どうして「○○が○○だったのにはびっくり!」などと書いてしまうのか。これから読む人がびっくりする機会を奪っていると思わないのか)

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④『まぼろしブタの調査』佐野美津男  サンリード

他の大人は誰も言ってくれない痛快で冷酷な後書きに、ほんとうに危ないところを救ってもらった子どもは僕です。

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⑤『記憶の国の王女』ロデリック・タウンリー 徳間書店

最初にこのリストをアップしたとき、これを入れるのを忘れていた。記憶に埋もれてしまったのではなく。いつもそばにいるからだ。思い出したら外すわけにいかない。

次に挙げた歴史的名作『はてしない物語』とおなじ守備位置のプレイヤーである。つまり物語についての物語。客観的に見てあっちがスターで、こっちが控えだろう。でも僕はこれが好きなのだ。いろんな意味でかわいくていとおしい。本を好きな人と、その人がこれから読む物語を遠くから一生懸命応援している。この本を読んで以来、その応援はずっと変わりなく届き続けている。いじらしい。

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⑥『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ  岩波書店

ハードカバーで読まないとダメ!ゼッタイ!って誰かが言っていたことは忘れた頃にハードカバーで読んで欲しい。

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⑦『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』天沢退二郎  復刊ドットコム

天沢らしさが凝縮された一冊。天沢しか書けない、天沢しか書いてくれない傑作ぞろい。五感を万遍なく刺激してくるが、五感以外もむくむくと頭をもたげてくる。「お呼びですか。ひさびさですな」みたいに。

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⑧『夜の子どもたち』芝田勝茂  福音館書店

わくわくどきどきはらはら。あの石室のシーンでは、もう限界!許して!ってくらいぞくぞくしました。

これも旧版で。装丁も口絵も含め、むしろ旧版でないと駄目。パロル舎版の加筆訂正部分はムンク顔で叫びたくなるくらいの愚挙。

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⑨『朝の少女』マイケル・ドリス  新潮社

思考の中の、とある曖昧な領域がくっきり像を結ぶ。触れると指が切れるくらいくっきりと。

本というものが世の中にあって、こんな自分とはかけ離れた人生経験を、これほどまでに生々しく積ませてくれる。ありがたい。

読んだ人はほぼ誰もが、一生忘れないだろう一冊。

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⑩『人魚の島で』シンシア・ライラント  偕成社

こういうのに出会いたいからいっぱい読んでる。読んでいるあいだ中「きたきたきたきたきましたよ」と思っていました。

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⑪『原猫のブルース』佐野美津男  三省堂

これが初佐野美津男でした。なんだか変で中途半端でいまひとつ、と、最初は思ったものです。

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⑫『ぼくの町に行きませんか』小倉明  小学館

たまらなくロマンティックでセンティメンタル。どこかに紛れて、長いこと手にしていないが、忘れられない。

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_ 遠からず、絵本オールタイムベストをやります。ちょっと引きを仕掛けてみますね。

不動の一位は、けっしてマイナーなものではないけど、よほど絵本に詳しい人でも予想はできないでしょう。

ほぼすべての書店に入荷したことがあり、しかし今も在庫している書店はほとんどないでしょう。と言っても版元が倒産しているわけではありません。てか福音館です。

ちなみに当店では2013年の刊行以来累計100冊くらい売っています。店頭で手に取ると、買ってしまう魅力があるわけです。目的買いで来る人はほぼいないでしょうから、これはかなりの威力。

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本日のコメント(全2件) [コメントを入れる]

_ 寝仔 [た、宝のお山……。]

_ 安良岡 [お忙しい中、ありがとうございました。]


2015-10-12 耳鳴りは、風景の名前のように

_ 予告した絵本オールタイムベスト15(ショーン・タンを除く。入れると切りがないので)です。ご参考まで。

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①『生きる』谷川俊太郎/岡本よしろう 福音館書店(たくさんのふしぎ 2013年9月号)

「生きる」はすでに声価の定まった詩作品であるが、「あーあれですか、知ってます」と、通り過ごさないでほしい。この絵本では、絵は詩の挿画ではなく詩は絵の説明ではない。絵は、とある一日の朝から夜までの点景の羅列で、詩の文言とは関係ない。しかし微妙に関わり合ってはいて、時に仕草で、ときにテーマで、ときに抑揚で、かすかに擦過するように触れ合う。その絶妙な空間。そこに生まれる魔法は、現物を見てもらうしかない。

その場を動かずに遠ざかること。それが超越論的な視野だとすれば、それを持っている知性と持っていない知性は決定的に別種である。ふだんは人間というおなじ種の名の下に、話が通じているふりをしてはいるが。

とある版元の営業のHさんに見てもらったとき、かれは最後まで黙ってめくっていたが、読み終えるとめくり直し、本に眼を落としたまま「なんですかこれは」と言った。僕はふふふと笑い返すにとどめた。「まいったな」と呟きながら買って行った、Hさんの幸運をお祈りする。ちなみにかれはふだん絵本なぞ買う人ではない。

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福音館の絵本雑誌はすべて、三年でカタログアウトします。まだ版元在庫あるはずですがお急ぎください。なお当店に在庫ありますが、返品にリスクのある商品をあまり売り場に置いておくと周囲と摩擦が生じるので、今はしまってあります。スタッフ東野にお尋ねください。

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②『悪い本』宮部みゆき/吉田尚令  岩崎書店

「怪談えほん」シリーズについて、スタッフの内輪で話していると、京極夏彦/吉田尚子の『いるのいないの』をこわいと言う人が多いのだが、僕はだんぜんこっちがこわい。過去無数にあったこわい絵本の傑作群と比較しても、別次元に到達していると思う。

書いている本人がいちばんこわかったことであろう。本は閉じることができるが、心は閉じて逃げ出すことはできないから。

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③『バルミ』ハビエル・エルナンデス/ピラール・コメス  東京書籍

架空の典型的都市の景観の推移を、古代の原野から現代まで、おなじ角度の俯瞰の全景図で細密に描いた絵本。過去へ未来へ時間を自由に散歩するように愉しく、いくら眺めていても飽きない。

同シリーズでは『レベック』と『サンラファエル』もいい。最寄りの図書館にあったらぜひ手に取ってみていただきたい。復刊熱望。

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④『どんなかんじかなあ』中山千夏/和田誠  自由国民社

今までに食べたいちばんおいしいものとか、いちばん痛かった出来事とか、肉眼で見たいちばんうつくしい人とか、殺したい人とか、経験が山脈だとして高いにせよ低いにせよひとつひとつの頂上が、その人の感情を内から眺めたときの消失点を形成する。

この本も、読んでいるあいだの気持ちと読み終わったときの気持ちの落差で、ひとつの頂上に連れ去られる。

本にさらわれて連れ去られた頂上あまたあれども、今も折に触れ、あれはすごい眺めだったなと、思い出す。

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⑤『こおり』前野紀一/斉藤俊之  福音館書店

斉藤俊之の絵本はぜんぶ好き。うまい。ジュースの中の氷の絵を見ていると、眼がしゃっこくなって、味が見えてくる。

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⑥『ハリス・バーディックの謎』クリス・ヴァン・オールズバーグ  河出書房新社

これを好き、という人にはたくさん出会った。とにかく創造を掻き立ててくれる力は抜群。さいきんこの本の「謎」の部分を侵犯するスピンアウト本が出たが、うれしいようなやめてほしいような。

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⑦『見えない道の向こうへ』クヴィント・ブーフホルツ  講談社

ひと言で言って、モノクロの『ハリス・バーディック』に対して、カラーで描かれたその姉妹編(という感じ)。『ハリス』を好きな人は聞き捨てならないと思うだろうが、本当に聞き捨てちゃ駄目な魅惑的な絵とキャプションが揃っている。

若い頃、絵の道に進むか音楽の道に進むか迷ったブーフホルツは、まるで「一瞬の音楽」のように絵を描く。

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⑧『ダーナ』たむらしげる  ほるぷ出版

静寂。そして青、青、青。

静けさが青い音のように瞳に聞こえてくる。

響き渡る静けさの、こだまは返ってこないくらいに、広い。すごく広い。

気が遠くなったと思ったら、遠くなっていったのはからだだったみたいな。

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⑨『ミラーストーン』マイケル・パリン/リチャード・シーモア/アラン・リー  岩波書店

アラン・リーの、背景の隅々まで行き渡った卓越した画力にしみじみ浸り込む。ヒロインの硬質な美しさも、一発で典型と化して保存された。

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⑩『ゆみちゃんはねぞうのわるいこです』みやざきあけ美  BL出版

豪快なユーモアというかダイナミックでチャーミング。前のめりになってたたらを踏むような読み心地。実写でもアニメでもマンガでも小説でもこの味は出ない。ナチュラルボーン絵本作家。大大大大大好き。次作にも期待している。ぜひ描き続けてほしい。

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⑪『みみお』鴻池朋子  青幻舎

本の中から何かがあふれてくることがある。さやかな風。遠くから近づいてくる楽の音。におい。重たい石がごとりと胸に置かれるような不安。突如訪れる十数年ぶりの夏。

『みみお』の中からくるのは嵐。くろぐろと、本のかたちに刳り抜かれた直方体の嵐が、どうとぶつかってきて隙間のない肉を吹き抜け、あばらをけたたましく揺さぶる。

そして、ぼくたちは「生きている時間よりずっとずっとずっと長い時間、死んでいる」と、刻みつけられた墓標みたいに立ち尽くして、読み終えた絵本を閉じることが出来ない。

一位でもいい傑作であるが、ぼくはこの絵本が「好き」と言うことができるほど器が大きくないのでこの順位。

この作者のもう一冊ある絵本、『焚書』(羽鳥書店)もすごい。けだもののような絵本。吼える。噛みついてくる。噛まれると、くろい血が滴る。この本も、一位にしないとすると、首根っこを摑んで押さえ込んでおかなければならない。

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⑫『やくそく』成田雅子  講談社

あなたが誰かの心の中の思い出だとして、今まさに忘れ去られつつあるとしたら、それをどんなふうに体験するだろうか。

しみじみとしずかなしずかな一冊。

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⑬『こっそりどこかに』軽部武宏  長崎出版

これはもう天沢的世界。好き。

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⑭『ごじょうしゃありがとうございます』シゲリカツヒコ  ポプラ社

なんだか『賢い犬リリエンタール』を思い出すなあ。めんこくて壮大。カラフルで鮮明。絶景連発。『カミナリこぞうがふってきた』もすばらしくて迷うのだが。

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⑮『ちいさなまち』藤田新策  そうえん社

めくりの効果であっと思わせてくれる、いわゆる「落ち」のある絵本。「ああ、あんなまちにすんでみたいな」「あ、やっぱりすみたくないな」「でもやっぱりすみたいな」「けどすみたくないかな」読み終わった後も、心を揺らす魅力的な街である。

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(当初ベスト12でしたが、往生際悪く増量しました)

本日のコメント(全8件) [コメントを入れる]

Before...

_ つちだゆう [知らない絵本ばかりで、これから見つけて読むのが楽しみです! そんなに絵本は詳しくないのですが、詩人の茨木のり子さん..]

_ 雪雪 [つちださんありがとうございます! 『プチキュー』を思い出させてもらって、「あれは絵の迫力がすごかったなあ」と思い返..]

_ つちだゆう [よかったです(笑)プチキューの迫力ある絵は山内ふじ江さんですね! 昨日ですが山形から埼玉に行く用事があり、その道す..]

_ 寝仔 [雪雪さん、こんばんは。 「生きる」(たくさんのふしぎ)は残念ながら版元品切れでした。 替わりに岡本よしろうさんの..]

_ 愛傘 [たむらしげるはサボテンぼうやの冒険が好きです。他の作品をあまり見かけなかったので参考にさせていただきます!]


2015-10-29 読むときはタイムトラベラー

_ 本をたくさん読む人なら誰でも、期待して手にしたのだが、そしておもしろくないわけでもなかったのだが、なんか読み進まなくて積ん読に埋もれてしまって、さりとてどうも気になって仕方がない本がいくつもあるだろう。

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話は変わるのだが本の好きな友人とある短編集について話していたとき、好きな一編の話が合って盛り上がった。しかし彼女が別の一編について語り出したとき、僕が「あ、それまだ読んでない」と言うと、彼女はびっくりした顔をした。

「だって冒頭の一編じゃないですか、さっきのを読んでてこれを読んでないということは、雪雪さんは本を順番に読まないということですか?」

「うん。世評から最高傑作と見当がつくやつか、タイトルが気に入ったやつか、でなければ短くておもしろそうなのから読むよ」

びっくりするようなことかとこっちもびっくりしたのだが、話に入ってきたもう一人の友人が、こちらも読書家としては剛の者であったが、「えっ!順番に読まないの?」とびっくりするものだから、僕は少数派ということになってしまった。意外である。

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出先とかでなにか読みたいが選択肢がなくて、しょうがなくその場にあった普段読んでないマンガ週刊誌を読んだりコミックスの途中の巻を読んだりして、そうして出会った作品がはからずもおもしろく、1巻から買っちゃったんだよねという経験は誰しもおありだろう。ちょうど映っていた連続ドラマの途中回を何気なく観ていたら思わず引き込まれてしまって、それ以降毎週観てしまった、みたいなことも。

物語の途中というのは、「こいつなに?」とか「おまえたちつまりどういう関係?」「なにがどうなってこんな事態に?」という作者の意図しないミステリが発生して、より知的な読み心地になる。

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本を読んでいて、展開がかったるくなったり、引きが弱まって気持ちが萎えてきたときには、そこをすっ飛ばして先の方を読むとよい。今読んでいるところがおもしろくないわけであるから、そこよりおもしろい可能性は高い。先の方を読んで勢いが出てくる頃には、「なにがどうしてこうなった?」という前の方への興味も再燃しているから、あらためて元のところに戻ればいい。いくら先に飛んでもおもしろくならなかったら、自分にとってハズレだったか、読むタイミングが合ってないということがはっきりするのだから、いっそ諦めもつく。

短編集さえ順番に読む彼女たちは、「作者の意図した配列を尊重する」という意思を持っているのだろうから、まして長編を飛ばして読むのは外道と感じるであろうが、読み始めてしまえば、読者は作者でもあり、読む人によっておなじ本も違うことを伝えてくるのだから、縛りは少ないほうがよい。なにより、読めずに終わるよりは、読み進むに越したことはないだろう。

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僕自身はさいきんは、小説であれノンフィクションであれ人文書であれ、順番に読む本より順番に読まない本のほうが多い。読み進まないときの苦肉の策として飛ばすのではなく、積極的に往来しながら読む。自然にそうなった。

(ただし世の中には、読み処は断然プロット、という本もあり絶対に順番に読まないとダメな本もある。その場合はどうか、作者の意図を尊重してください)

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本日のコメント(全10件) [コメントを入れる]

Before...

_ 雪雪 [寝仔さんへ 僕は、『指輪』も『ホビット』も挫折しています。読んでいてわくわくして来ないのです。凝りに凝った設定と、..]

_ 寝仔 [雪雪さん、ありがとうございます。 今はこの一言ですべてを言います。]

_ 寝仔 [ここのお返事にまた来たいです。]

_ 寝仔 [雪雪さん。 最初に思ったのは、ああ、これですべての魔術師の原型を恐れなくてすむ(安心して他作品を読めるなあ)という..]

_ 寝仔 [悪魔についてのお話はまた。m(_ _)m]