_ 本をたくさん読む人なら誰でも、期待して手にしたのだが、そしておもしろくないわけでもなかったのだが、なんか読み進まなくて積ん読に埋もれてしまって、さりとてどうも気になって仕方がない本がいくつもあるだろう。
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話は変わるのだが本の好きな友人とある短編集について話していたとき、好きな一編の話が合って盛り上がった。しかし彼女が別の一編について語り出したとき、僕が「あ、それまだ読んでない」と言うと、彼女はびっくりした顔をした。
「だって冒頭の一編じゃないですか、さっきのを読んでてこれを読んでないということは、雪雪さんは本を順番に読まないということですか?」
「うん。世評から最高傑作と見当がつくやつか、タイトルが気に入ったやつか、でなければ短くておもしろそうなのから読むよ」
びっくりするようなことかとこっちもびっくりしたのだが、話に入ってきたもう一人の友人が、こちらも読書家としては剛の者であったが、「えっ!順番に読まないの?」とびっくりするものだから、僕は少数派ということになってしまった。意外である。
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出先とかでなにか読みたいが選択肢がなくて、しょうがなくその場にあった普段読んでないマンガ週刊誌を読んだりコミックスの途中の巻を読んだりして、そうして出会った作品がはからずもおもしろく、1巻から買っちゃったんだよねという経験は誰しもおありだろう。ちょうど映っていた連続ドラマの途中回を何気なく観ていたら思わず引き込まれてしまって、それ以降毎週観てしまった、みたいなことも。
物語の途中というのは、「こいつなに?」とか「おまえたちつまりどういう関係?」「なにがどうなってこんな事態に?」という作者の意図しないミステリが発生して、より知的な読み心地になる。
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本を読んでいて、展開がかったるくなったり、引きが弱まって気持ちが萎えてきたときには、そこをすっ飛ばして先の方を読むとよい。今読んでいるところがおもしろくないわけであるから、そこよりおもしろい可能性は高い。先の方を読んで勢いが出てくる頃には、「なにがどうしてこうなった?」という前の方への興味も再燃しているから、あらためて元のところに戻ればいい。いくら先に飛んでもおもしろくならなかったら、自分にとってハズレだったか、読むタイミングが合ってないということがはっきりするのだから、いっそ諦めもつく。
短編集さえ順番に読む彼女たちは、「作者の意図した配列を尊重する」という意思を持っているのだろうから、まして長編を飛ばして読むのは外道と感じるであろうが、読み始めてしまえば、読者は作者でもあり、読む人によっておなじ本も違うことを伝えてくるのだから、縛りは少ないほうがよい。なにより、読めずに終わるよりは、読み進むに越したことはないだろう。
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僕自身はさいきんは、小説であれノンフィクションであれ人文書であれ、順番に読む本より順番に読まない本のほうが多い。読み進まないときの苦肉の策として飛ばすのではなく、積極的に往来しながら読む。自然にそうなった。
(ただし世の中には、読み処は断然プロット、という本もあり絶対に順番に読まないとダメな本もある。その場合はどうか、作者の意図を尊重してください)
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二三日迷っているのですがそのうち質問に伺います。 <br>(選択形式、その他あり)
私は紫堂恭子さんの「グラン・ローヴァ物語」(潮出版社)を2巻から読みました。プチフラワー誌上で「辺境警備」世界の箱庭 後編で彼女の作品に出会った私には、2巻! だけど読みたい! という衝動に反抗する意味はありませんでした。 <br>一時期順番読みを自分に課したこともありましたが、今はトリガー避けに全体をざっと拾って(ストーリーでなく文字を)買うこともあります。 <br>けっこうフォントの字面に影響を受けているというのは最近気がつきました。 <br>途中から読むの、好きです。 <br>ところで指輪物語をどうしても挫折してしまうのですが、ここかっこいいよ! というシーンがありましたら章の名前でもよいのでよかったらお教え下さい。
肝心の質問です。 <br> <br>Q. 雪雪さんは自分の中の悪魔を箱から出したことがありますか? <br> <br>1.ない <br>2.コントロール下 <br>3.放し飼いくらい <br>4.そもそもいない <br>5.その他 <br> <br>6.無回答 <br> <br>私は最近自分を守るために私の悪魔を箱から出しました。 <br>人を初見で袈裟斬りにするようなことかつてとまでは行かず、 <br>防衛一方、退却一方ではありますが) <br>そしてたぶん同列に語れると思うのですが、自分の好奇心に <br>正直にあるあまり、他者に立ち入ることも増えた気がします。 <br>後者の断罪は置いておいて、はたしてこの悪魔さんが私自身 <br>ではあるのですが、無邪気に遊ばせておいてよいものなのか、 <br>測りかねているのです。 <br>もちろん最終的判断は私にありますが、雪雪さんにもし心当たり <br>のある経験がありましたらお聞きしたいです。しかしプライベート <br>に関わりますし、考える力を消耗するお話でもありますので、 <br>無回答も可能であり、急ぐ質問ではないことを記しておきます。
袈裟斬りにするようなことかつて←袈裟斬りにするようなこと(
寝仔さんへ <br>5です。 <br>叡智とは破ってはならない暗黙のルールを破る力ですから、それは悪の一部です。 <br>やさしい悪魔が僕の目指すところで、いまのところ僕は温和なちいさな悪魔です。 <br>つまり僕の悪魔はいつも箱の外、頭の中にいます。 <br>頭の外、つまり外界に悪魔を解き放ったことはあります。 <br>以前、決定的に敵対することになった人物が、悪魔だったからです。敵がルール無用であるとき、こちらに権力か武力の優位がないならば、叡智(悪の力)で戦うしかありません。 <br>もちろん、大切ななにかか、あるいは自分の命が脅かされるような水準の危機でなければ、悪魔を外には出しませんけれど。 <br>僕は、あんなこと起こらなければ良かったのにと思っていますが、僕の中の悪魔にとっては最高に幸福な思い出です。悪魔がいてくれて良かった、というのが実感です。 <br>事態に関わった人達のプライヴァシーに触れるので、こういう場では詳細は語れませんが、幾許なりともご参考になれば。 <br> <br> <br> <br>
寝仔さんへ <br>僕は、『指輪』も『ホビット』も挫折しています。読んでいてわくわくして来ないのです。凝りに凝った設定と、固有名詞の美しさは大好物なのですが、僕にとって魅惑的に感じる「謎」があらわれてこないので。 <br>後続のあまたのモダンファンタジィを産み出した、豊穣なフォーミュラを構築してくれてありがとう、とは思っています。
雪雪さん、ありがとうございます。 <br>今はこの一言ですべてを言います。
ここのお返事にまた来たいです。
雪雪さん。 <br>最初に思ったのは、ああ、これですべての魔術師の原型を恐れなくてすむ(安心して他作品を読めるなあ)ということでした。 <br>なぜかー。 <br>私には先生がいたので、必読の呪いにかかっていたのやもです。 <br>「ホビット一族のひみつ」という本は名前の由来と可愛らしい名簿 <br>の本です。ここから入れるかな? など思いつつ、無理なく参ります。 <br>象徴的に、 <br>「百万畳ラビリンス」は衣装ケースの上に面陳しています。 <br>私にとっての謎について無心にとびうつること。 <br>だけではないのですがたくさんの思い出も含む、新たな好奇心も含む象徴として。 <br> <br>長くなりました。 <br>ご迷惑でなければまた来ます。 <br>雪雪さんは御無理されず。
悪魔についてのお話はまた。m(_ _)m