_ レイモンド・スマリヤンの『哲学ファンタジー』は、大好きなのだが買切で、潤沢に在庫しておくことができなくてたびたび売り逃したが、このほどちくま学芸文庫に入ってたいへんよろこばしい。「文庫化のネタ」について版元さんから訊ねられたとき、幾度となく推薦してきた甲斐があった。二冊ぽっちの配本はすでに折よく来店した馴染みのお客様に売ってしまったが、追加して積みます。
おもしろいところはいっぱいあるけど、特に「心身問題のファンタジー」の章では、哲学の本で無意味な言葉のたとえに定番的に使われる「円い四角があった」とか「赤い青を見た」といったフレーズが、素直に有意味であるケースが提示されていて、初読のときには、ドアのない部屋からすっと抜け出したような爽快感で、脳がソーダになった。
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_ あ、それからね、ラテンアメリカ文学史の高みにきらめく天上の星、フアン・ルルフォの唯一の長編『ペドロ・パラモ』がひさびさの復刊です。当店でも手持ちの最後の一冊を売ってしまったところだったので、願ってもないタイミングでした。すぐに読む気がなくても買っておくことをおすすめします。
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_ 昨日、フアン・ルルフォに言及したけれど、『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集』の『短篇コレクション1』にはフアン・ルルフォの「タルパ」が収録されており、そこに忘れ難いコメントが付されている。前半部を引用する。
「長篇は長いから途中でだれてもなんとかなるが、短篇の原理は形の美である。ぜったいに隙やゆるみがあってはいけない。
この話など、整いの美の手本であると思う。完璧な短篇」
ひとりの作家・批評家が、一生に一度しか使えない評言であろう「完璧な短篇」を、池澤夏樹はここで使った。
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_ 僕にも「完璧な短篇」として想起される短篇がある。
島尾敏雄の掌編集『硝子障子のシルエット』収録の「草珊瑚」。
なにげなく想い出すことができない。この作品を想い出すと、心の中で両開きの扉が押し開かれて、重さのない水のようにひかりがなだれこんでくる。眼を細める、という仕草で、心を細めてしまうようなまぶしさ。
このなにげなくのどかでやわらかくほほえましい掌編を読んで、ぼくは永続的に、ほんの少しだけ賢くなった。愚かにする力能には事欠かない世界で、それは奇特なことである。
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_ ナナイ [図書新聞の連載、終わってしまったっぽい。あのう、kindle から木地雅映子さんの『20/20』が発売されているのだ..]
_ ナナイ [置いていくね。木地雅映子『20/20』 http://www.amazon.co.jp/dp/B00EMZNIBM/..]
_ 雪雪 [寝仔さん、峯岸さん、ナナイ。かまってくれてありがとう。 相変わらずフットワークがトロく、敏活なレスポンスができないけ..]
_ ナナイ [次 RADIO GROOVE に登場するときお知らせほしいなー(・∀・。)]
_ 雪雪 [>ナナイ 今やってる枠はパブ枠なんで、空きが出たとき、いつでもワンテイクで突っ込める俺のところに依頼がくる。そういう..]
_ 寝仔っこ [缶ビールのシーンがとっても楽しみになってしまい、 早速「ダールワス・サーガ」を三作取り寄せて「闇の戦い」 をゆっくり..]