_ 9月3日のコメント欄で安良岡さんに振られたたのをきっかけに、遠い目で児童に遡行してみました。
私的な、児童文学オールタイムベスト12です。ご参考まで。10におさめたかったのですが、無理でした。
入手困難なものが多くなりましたが、それでこそ僕のようなものが語る意味がある気がします。どこかで「あっ!自分の他にもこれを好きな人がいる!」と思ってもらったりすることが、なにかのきっかけになるかもしれなくて、こんな工合で。
児童文学とジュブナイルとYAとラノベの境界は微妙ですが、「どれかと言ったら児童文学!」というにおいのものに限りました。やっぱり微妙だけど。
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①『オレンジ党と黒い釜』天沢退二郎 復刊ドットコム
団地や造成地や立て札や水溜まり。なにげない風景点景があやしさを帯びて、歩いているだけでさくっとするのは、大人になる前に天沢に出会ったせいだ。
作品の完成度よりも、受けた影響の生涯にわたる大きさを思えば、ぱっと見不動の一位。
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②『魔法使いの伝記』佐野美津男 小峰書店
この本で神や人生について、とても大事なことを学んだ。その後いろいろいろな方法でいろいろなことを経験し学び悟ったが、この本で学んだことは、別途学ぶ機会はなかった気がする。場合によっては不動の一位。
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③『ザ・ギバー』ロイス・ローリー 講談社
ここは旧版で。翻訳の差は微細。しかし決定的(とはいえ新評論版もわるいわけではない。講談社版が見つかるまで読むのを我慢すべき、という種類の差ではない)。
先験的に認識できないことの認識の可能性について、つまり不可能が可能になることについて、思いも寄らぬ角度に亀裂が入り、光が漏れ出してきた。それはある種の希望。そこは岩盤ではなかった。壁なんだ、という希望。こんな経験は他では得られない。実は不動の一位。
(しかし、web上にいくつか、おそろしいネタバレコメントがあるなあ。この比類無き貴重な読書経験を台無しする爆弾が。どうして「○○が○○だったのにはびっくり!」などと書いてしまうのか。これから読む人がびっくりする機会を奪っていると思わないのか)
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④『まぼろしブタの調査』佐野美津男 サンリード
他の大人は誰も言ってくれない痛快で冷酷な後書きに、ほんとうに危ないところを救ってもらった子どもは僕です。
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⑤『記憶の国の王女』ロデリック・タウンリー 徳間書店
最初にこのリストをアップしたとき、これを入れるのを忘れていた。記憶に埋もれてしまったのではなく。いつもそばにいるからだ。思い出したら外すわけにいかない。
次に挙げた歴史的名作『はてしない物語』とおなじ守備位置のプレイヤーである。つまり物語についての物語。客観的に見てあっちがスターで、こっちが控えだろう。でも僕はこれが好きなのだ。いろんな意味でかわいくていとおしい。本を好きな人と、その人がこれから読む物語を遠くから一生懸命応援している。この本を読んで以来、その応援はずっと変わりなく届き続けている。いじらしい。
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⑥『はてしない物語』ミヒャエル・エンデ 岩波書店
ハードカバーで読まないとダメ!ゼッタイ!って誰かが言っていたことは忘れた頃にハードカバーで読んで欲しい。
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⑦『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』天沢退二郎 復刊ドットコム
天沢らしさが凝縮された一冊。天沢しか書けない、天沢しか書いてくれない傑作ぞろい。五感を万遍なく刺激してくるが、五感以外もむくむくと頭をもたげてくる。「お呼びですか。ひさびさですな」みたいに。
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⑧『夜の子どもたち』芝田勝茂 福音館書店
わくわくどきどきはらはら。あの石室のシーンでは、もう限界!許して!ってくらいぞくぞくしました。
これも旧版で。装丁も口絵も含め、むしろ旧版でないと駄目。パロル舎版の加筆訂正部分はムンク顔で叫びたくなるくらいの愚挙。
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⑨『朝の少女』マイケル・ドリス 新潮社
思考の中の、とある曖昧な領域がくっきり像を結ぶ。触れると指が切れるくらいくっきりと。
本というものが世の中にあって、こんな自分とはかけ離れた人生経験を、これほどまでに生々しく積ませてくれる。ありがたい。
読んだ人はほぼ誰もが、一生忘れないだろう一冊。
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⑩『人魚の島で』シンシア・ライラント 偕成社
こういうのに出会いたいからいっぱい読んでる。読んでいるあいだ中「きたきたきたきたきましたよ」と思っていました。
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⑪『原猫のブルース』佐野美津男 三省堂
これが初佐野美津男でした。なんだか変で中途半端でいまひとつ、と、最初は思ったものです。
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⑫『ぼくの町に行きませんか』小倉明 小学館
たまらなくロマンティックでセンティメンタル。どこかに紛れて、長いこと手にしていないが、忘れられない。
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_ 遠からず、絵本オールタイムベストをやります。ちょっと引きを仕掛けてみますね。
不動の一位は、けっしてマイナーなものではないけど、よほど絵本に詳しい人でも予想はできないでしょう。
ほぼすべての書店に入荷したことがあり、しかし今も在庫している書店はほとんどないでしょう。と言っても版元が倒産しているわけではありません。てか福音館です。
ちなみに当店では2013年の刊行以来累計100冊くらい売っています。店頭で手に取ると、買ってしまう魅力があるわけです。目的買いで来る人はほぼいないでしょうから、これはかなりの威力。
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た、宝のお山……。
お忙しい中、ありがとうございました。