_ 「性格って変わるもの?」という問いを、いろんな人に幾度となく訊かれた。
一例に過ぎないが、若い頃、短気で乱暴だったぼくは、今では温和で気の長い人と目されている。うん、変わると思うよ。
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人は環境や境遇や出会う人の影響を多大に受ける。一人の人物が多様な変化の可能性を持っていても、じっさい観測されるのは現実化した一例だけだから、その振り幅を実感する機会はほぼ無い。しかし十年前に分岐した可能世界のあなたと、この世界のあなたを、今較べることが出来たら、思いの外ちがった人になっているんじゃないかな。
この世界のあなたを「あなた」と呼び、分岐先のあなたを「かなた」と呼ぶとして、十年後にあなたとかなたが会って話したら、あなたが夢中になっているバンドを、かなたは「聴いたことあるけど、まあ嫌いじゃないよ」なんて言うし、かなたが「この十年で最高の映画だった。世界観が変わった」と言う映画を、あなたは観ていないし、かなたに言われるまで観る気もなかったろう。この十年でいちばん辛かったこと、思い出したくもないそのことを、無意識が検閲してあなたは思い出せなくなっているし、かなたは思い出せるが、そもそもちがう出来事だろう。
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クラーク・エリオット『脳はすごい』(青土社)は、交通事故による脳震盪で多様な障害に見舞われた人工知能研究者の体験記である。
まずその症状が多彩で興味深い。
そして何よりも、著者がとても賢くて卓越して鋭敏ですごく粘り強い。ゆえに、知覚と精神と身体と行動に表れる様々な症状の実態と分析と悪戦苦闘が、比類ない生彩さで活写される。
脳の異常は世界の異常である。世界を変容させるような異常が、どんな角度から訪れ、どんな力で働き、それに対して理性と根性がいかに抗し得るか、あるいは抗し得ないのか。このようなことに関心のある人にとって、必読の一冊だと思う。
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後半、著者は長年の苦しみから解放してくれる画期的な治療法に出会う。それは簡便なエクササイズの補助を伴いはするものの、基本、患者の症状に応じてカスタマイズされた眼鏡をかけ、治癒の度合いに沿って掛け替えてゆくだけ。
細目は本書を読んでいただくとして、世界の「見え方」を変えてゆくことによって、脳を変えてゆくのである。この過程で、狙った治療効果に連動していろいろな狙ってない変化が起こる。まるでクラーク・エリオットの、あなたとかなたがザッピングされるみたいに、思わぬ変化が起こり、その変化が変化する。
これから読む人にあまり予断を与えないように、あえて具体的には書かないが、このあたりの展開は、「こんなに知らないことがたくさん書いてある本はひさびさだなあ」と感じるほど、新鮮な認識に満ちている。扉があるとは知らなかった場所で、鍵の外れる音がひびく、あの感じだ。
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長い間破られず、不滅の大記録と称された世界記録が、ひとたび破られると、それを破る選手が次々あらわれる。
「破れない」という認識によって抑えられていたものが「破れるんだ」という認識によって解禁される。
そういう認識の薬効が、この本にはある。こんなことが可能なんだ、世界の親しさ美しさが芸術的感性が性格が、こんなに容易に変わるんだ、という認識が、読む人の無意識の中の暗黙の常識を撤回する。たとえ「やりかた」はわからなくとも、無意識の心の準備が感性を鋭敏にして、親しみのなかった「やりかた」の情報たちを、のちのち振り向かせるだろう。
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無意識を動かすのは、「なにをするべきか」という託宣ではなく、「それはできる」という実感なのだ。
無意識が「できる」と思えなければ、したくならない。最高の勉強法とは「やりかた」ではなく、「できるんだ」という希望と、「したいんだ」という渇望である。
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雪雪さん、2ヶ月ほど旅に出てきます。<br>お土産話があるかどうかは私の頭脳にかかっていますが、のんびりお待ちください。<br>寝仔
ご無沙汰しております。<br>ふと覗いたときに、この場所が相変わらず存在していることにほっとする気持ちです。<br>こちらも、何とかやっています。<br><br>この場では書けないのですが、雪雪さんのご意見を聞きたいなぁと思うことがあり、書き込みさせていただきました。<br>もし気が向いたらご連絡いただけるとありがたいです。
と言いつつ来ました。ひょっこり。<br>「十三番目の王子」読み終えました。<br>解説を読むとここから始まる物語の続きが書かれる予定があるということ。とても楽しみです。<br>細密さと酷薄な優しさをとても好物に思います。<br>ではまたm(_ _)m。
>寝仔さん<br>いってらっしゃい。<br>『十三番目の王子』ですが、版元さんによると売れていないとのこと。なんとかつづきを書いてもらいたいなあ。<br><br>>エマ<br>うーむ。メールは戻ってきたし、電話はつながらない。<br>こちらのアドレスは変わりないので、メールをくださるとよいと思う。どうやらエマに対しては書けるようだ。前置きがいらないからであろう。
初めまして。とある蝶のハードカバーから翔んできました。<br>僕は希望の反対は絶望じゃなくて渇望だと思っていて。喉が潤っているのが希望で喉が渇いていて潤いたいと思うのが渇望。確かに一般的な対義語としての概念ではおかしな話なのですが愛の反対が憎でないように、希望の反対は渇望であってほしいという願いなのかもしれないですが。<br>能はすごい 読んでみたいと思います。雪雪さんのブログはエネルギーを感じました。多分僕の瞳が輝いてるはずです。涙かどうかはわかりませんが。ただ、僕は人間は水でできているから人からエネルギーをもらうとそれを動力にして輝くと思っていて。水力発電。うまくまとまらないのですが、とても温かくなりました。機会があればお仕事場にも行ってみたいです。東京からはちょっと遠いみたいですが…。オールタイムベスト等々参考にします!
ですがの繰り返しと、脳の誤変換はお許しください
厳密に書けば酷薄と優しさの同居です。先の書き込み。<br>続き楽しみですが、そう言えばこの世界にはまだ描かれていない続きがたくさんあるなあと思い馳せる気持ちです。<br>ハンドルをもしかしたら今後変えるやもですが、近々また伺います。
雪雪さん。<br>故あって予定を繰り上げ帰還しました。<br>旅の途中でこの本を買い、お土産話と言った自分に言質を取られたがごとく、<br>したことのない経験をしました。<br>興味深い部分を抽出してなるべく簡便に、紙のお手紙を書きます。<br>お返事の必要のないお手紙です。<br><br>名前はこのままで、何も変えることなく、変わった部分を受け止めて、<br>行きます。<br><br>御中とお名前で。御迷惑でしたらストップをかけて下さい。<br><br>「脳はすごい」も付箋だらけにしましたので、後々まとめます。<br><br>来年もよろしくお願いいたします。m(_ _)m<br><br>寝仔
書くのが遅いですので、きっと2月か3月になるかもしれません。<br>投函しましたら手を振りに来ます。