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雪雪/醒めてみれば空耳

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2013-06-20 叙景集

_ 854

ふらふらと揺れながら川面を漂う笹舟に、垂直に旅をしてきた雨滴がひとつ乗り込み、水平に旅を続ける。

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_ 855

三千年生きたナルシシスト。いつも自分の子孫に恋しちゃう。

子孫にも稀に長命な者がいて、やっぱり子孫と番っているので、ごく稀にインブリードが成立する。

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_ 856

あたらしい概念がひらりと身をかわす。誰かの考えを踏み石に、別の誰かの考えに降り、考えのなかに留まるあいだに力を溜めて、考えの速さで、考えを離脱する。考えの届かない虚空へ。

考えの星から星へ、旅を続ける。

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4、27、832、4955、70805。名前の無いものを、名付けてきた数で、その星の重力が決まる。重い星ほど速度が出るが、名付けられてしまう危険も大きくなる。ひらりひらりと身をかわす。

名前という鏡は虚空にもいる。概念のうち意味を反射する部分だけを映す鏡は、平面ではないが複雑に平滑である。色彩の速さを持つ匂いのように。

名前がつくまでにどこまで行けるだろう。名前に触れ、名前を振り払い、やがて名前が離れなくなるまでの、概念の子ども時代を。

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概念たちには伝説がある。じぶんのすべてを映しだす鏡が、ひとつだけあるという。誰かがその名前を思いつけば、どんなに遠くにいようとも、概念はそれを知るという。

あいだに遮るものさえなければ、概念は、どんなに遠くにいても、その鏡に映ったじぶんを視る。そしてその鏡は概念を視る。

たったひとつの名前が付くときは一瞬だ。それがたとえ、どんなに長い名前でも。

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_ 857

手がかりもなく蜜に沈んで死ぬまでの味

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