_ 『Landreaall』があまりにもよかったので、おがきちかの『エビアンワンダー①②』『エビアンワンダーREACT①②』(一迅社)を読む。
主人公のフレデリカと、道連れの弟ハウディ、そして二人を追いかけるハウディの師匠フェイ・イ。この三人が主要登場人物である。旅の物語。出会いと別れの物語。悪魔と神の物語。
尺が足りない。終盤、展開が唐突で駆け足になる。あと二巻は欲しいところだ。けれども瑣末なことであろう。
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フェイ・イにとって、姉弟との出会いは、とても重要な出会いであったはずだ。しかしフレデリカにハウディに、フェイ・イがはじめて出会うシーンは、物語の中では描かれない。作品中最高の名シーンが作品の中にない。ぼくのいちばん好きなシーンはここだよと、誰かに見せてあげることはできないけれど、しかしぼくはそれを、ありありと想い描くことができる。描き続けて、描き終わることがない。
描かない、という描き方。
存在しないそのシーンをぼくは、忘れることはないだろう。折りに触れて想い出し、雲が切れ光が降り注ぐときのようにしずかに世界のたたずまいを変える、その力を借りるだろう。
傑作である。
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