_ 文藝春秋の新企画、現代作家の自撰短編集シリーズ『はじめての文学』の、今月の配本はよしもとばなな。
たった七編の収録作の中に「ともちゃんの幸せ」が含まれていて、それは意外な、うれしい驚きだったが、ぼくは不安だった。その目次の示すページに、あの「ともちゃんの幸せ」があるかどうか、不安だった。
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アンドリュー・ワイルズは、長い間、そこに籠めることのできるすべてを投入してきたフェルマーの定理の、最終的な解決に到達した翌朝、幸福感ではなく不安の中で目覚めた。達成したことがあまりに大きく、それがあまりに長い間渇望してきたことだったために、昨日のことが、まさしく夢としか思われなかったのだ。
あんなことが本当に起こったのか? 信じられない。
彼は勇気を奮い起こし、重い荷物のように自分を、研究室の机の前にまで運ぶ。そして見る。
それはあった。本当に存在していた。
ワイルズは、フェルマーの定理の証明を発見した翌朝、自分がフェルマーの定理の証明を発見したことを発見した。
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ぼくはよしもとばななの「ともちゃんの幸せ」を単行本で読んだので、文庫本を手に取るときには少し勇気がいった。
「ともちゃんの幸せ」は勇気を持って書かれたものだと思う。思い切って書かれたものだと思う。あの、不安定な、終わっていない物語は、作者の中でも終わっていないはずで、書かれている最中のように迷われ続けているはずだから。
あの作品を、あのままにしておくのに、作者は耐えられなくなるかも知れない。そう思えたのだ。
文庫のときは大丈夫だった。今にも壊れそうな物語は、壊れずにそこにあった。
_ でも安心はできないのだ。あれはいつだって、まだ終わっていないのだから。
『はじめての文学 よしもとばなな』の目次に、「ともちゃんの幸せ」があるのを見つけたとき、うれしかったけど不安だったのは、そういうわけなのだ。
気がかりな場所ははっきりしている。ぼくはその一節にまっすぐ進んだ。
それはなかった。
あの唐突な語りが始まるその冒頭で、物語をぐらりと傾かせていた破格の四行が、きれいに削除されていた。お話のすじみちはなにも変わっていない。作者のメッセージも変わっていない。むしろ流れは少しく自然になり、完成度は高まったのかもしれない。しかしこれはもはや、微妙にバランスを欠いた、心持ち斬新な傑作にすぎない。
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終わらない物語は、支流を伸ばし、繋がり、伏流し、思わぬところに湧出する。そしていくつかの流れは涸れる。いま水源の近傍で主要な流れがひとつ涸れた。ひとつ涸れたにすぎないと言うこともできる。しかし水源に近過ぎる。
たくさんの人が、『はじめての文学』ではじめて「ともちゃんの幸せ」に出会うだろう。それは、残念である。残念ではあるが、ともちゃんに幸せと不幸せがあるように、「ともちゃんの幸せ」にも幸せと不幸せがある、ということであろう。
一読者であるぼくはせめて、このような文章を書いて、「ともちゃんの幸せ」の幸せを祈るばかりである。
あぁ、「ともちゃんの幸せ」……わかります。『デッドエンドの思い出』を出てすぐに読んだとき、「これは心に残る本だ」と思って書架にしまった、その理由は、まさにこの物語によってだったから。<br>『初めての文学』シリーズは、私も書店で眼にしました。<br>よしもとばななが入ってるんだ……と思いつつ、作品のラインナップを見て、「ともちゃんの幸せ」が入っていることだけを確認し、それならよかった、とその場を後にした……これは「単なる書籍購買者」であるウサギの態度です。<br>些か気になりはしたけれど、自分の持っているものと較べることはしませんでした。<br>そうか、最初の4行が切られていたのか……。<br>でも、おそらく、それもまた著者の意図でしょう。<br>書く人、造る人、売る人、買う人(それらは峻別はできない)の、それぞれのその時「今」を映すという意味も含め、私も「ともちゃんの幸せ」の幸せを祈ります。
☆おさとウサギさん、いつもありがとうございます。<br>ウサギさんのけはいは、北極星のようにいつも視界内にあるのですが、なんだかふしぎな心境の水域を漂い続けており、状況を扱いかねております。<br>五里霧中ということはないのですが、とりあえず陸に着かないことには、なにかをするために相応しい心境に歩いていくことができません。<br>今度は、どこに着くのかな。
ありがとうざいます。<br>日付はともかく、時刻が02:24って……。御身体、ご無理なさってませんか?<br>それにしても、北極星に譬えられるとは……恐縮至極。<br>北極星は動きませんが、ウサギは時に飛んだり跳ねたりします。<br>少なくとも地球上(の北半球)に居るならば、北極星は「視界内」にあると言えましょうが、私も動くかもしれないし、雪雪さんの居場所も変わるでしょう。<br>視界から外れてもかまいません。<br>それに、ウサギは星よりは「月」にいる、ということになっていますし……。<br>これに関しては、また改めてお話しします。<br>「月の餅つきウサギ」について。<br>ともあれ、雪雪さんは「水域」を漂っていらっしゃるのですね、承知いたしました。<br>「どこか」の陸にお着きになる時を待ちます。<br>私も、ひょっとすると似たような気分です。<br>暖かくなる頃、私はどこに漂着してるのかな……<br>何よりも、雪雪さんのご負担にならぬことを願いつつ<br>おさとウサギ、深夜の巣穴より
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