◆降臨◆
からっ風だけが通う雲上の学校。
ここは寒い。というより、ほとんど温度らしい温度がない。張り詰めた頭皮の校庭は髪の毛も血の気も失せてしまって、世界はもう存続することに関心がない様子だ。
巫女は以前見かけたときのまま、倦み鳥の玉座に座って待っている。足音は聞こえているだろうに、落っことした眼球を眺めているようなからっぽの視線を、こちらに向けようともしない。
「神さまはどちら?」そう尋ねると、右腕だけが吊られたようにゆるりと持ち上がり、答えもせずに鼻をほじりはじめる。異教徒とみて侮っているのか。思わずむかっとする。彼女の鼻の穴から、つーっと神さまが垂れてくるまでの、みじかいあいだだったが。