◆ひからびさん◆
ピンクひからびさんのカップにお湯を注いで三分。自分で蓋を押し上げ「御用ですかー?」あどけなく尋ねるあつあつのひからびさんに、娘への伝言を頼む。真剣に聴き入る表情は、ごく小さいのに遠くはないので奇妙にあざやか。
人肌くらいに冷めるのを待って、どっこいしょとテーブルに片足を乗せて股ぐらを差し出す。「毛はまとめて掴んでね、痛いから」「あいよっ」ひからびさんは外陰部に取り付き陰唇を掻き分けて高窓から忍び入る忍者みたいにするりと潜り込む。産道を滑らかに遡行して子宮に到達したのがわかる。しばらくもぞもぞして反転。「ぷはー」と言って出てくるところを掌で受け止める。「あなたが最初のお友達よ」「てへへ、羊膜越しでもべっぴんさんでしたよー」ひからびさんは暗視が利くのだ。
翌朝、どぶ臭い水の染みがテーブルまで続いていて、ピンクひからびさんの姿がない。脱走ひからびさんの地下組織に誘拐されたにちがいない。
救助隊を編成せねばならない。
迷彩ひからびさんのカップを三個用意してお湯を注ぐ。注ぎ終わりの時間差そのまま、三分きっかりに迷彩ひからびさんはびしっと蓋を撥ね上げ敬礼する。敬礼する。敬礼する。