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雪雪/醒めてみれば空耳

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2006-05-19 叙景集

_ 706

「辛過ぎるよ、このキムチ」と言ってぼくは、マイナス一味唐辛子を振りかける。

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_ 707

水溜りのなかの空から落ちてきた流星が青空に落ちてゆき燃え尽き

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_ 708

柔軟性の精霊が洗剤に配合され洗濯物はふかふかに洗い上がる。洗濯物の精霊は柔軟性の精霊に恋をするが、生乾きの精霊に「吊り合わない」と言われて落ち込む。

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_ 709

◆CLOUD GAZING◆

群をなして流れる雲はなべて凡庸だったが、天才的な雲がひとひら、世界の秘密を露骨に開示しながら、空の吸う匂いのようにかぐわしく南へ流れてゆく。と思う間にその精妙な姿形は崩れ、どうとでもとれる曖昧な輪郭にほとびる。

一輪の蒲公英が風に逆らって、天をゆく秘密の残骸を口惜しげに見送っている。やがて蒲公英から蒲公英伝いに、匂いより速く音よりは遅い火急のしらせが回付されていったのか後刻、北半球の蒲公英がひとしなみに、おおよそ南に向けてたなびき、いきなりの「かちり」という擦過音を聴きつけた少女が跳ね起きる。そして眼鏡をかける。

その少女に見てもらうはずだった夢が、次の晩まで後ろ髪にしがみついているので、日中、いわれなく振り返ってしまう自分を少女はあやしむ。

叢に腹這いになった裸足の青年は気付かれたと思い込み、少女を尾行することを諦める。緊張を解いて、ごろんと仰向けに転がるとちょうど真上にぽっかり雲が浮かんでいるのが見える。ぎくりとする。背中の下でたわんだ蒲公英がいっせいに跳ね戻って彼の体を、胴上げよろしく宙に抛り投げるという予感がするがするだけ。そしてこんなことが前にもあったという気がするのは誰だ。

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_ 710

同級生の母親からお駄賃として遺伝子をもらう。