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雪雪/醒めてみれば空耳

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2006-03-21 叙景集

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◆検閲街道領Ⅰ◆

東国と西国のあいだに街道がある。街道もひとつの領であり、東西に属し、またどちらの国にも属さない。一本の国境線のあいだにある国と言えばよいか。

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_ 667

◆検閲街道領Ⅱ◆

東国の民も西国の民も、街道の上を南北にどこまでも旅していくことができる。けれども、街道を渡ることは禁じられている。東から西に突っ切ってはならないし、西から街道に乗った者は、どれだけ移動した後でも東へ降りてはならない。

街道の上では東国の者も西国の者も、たがいを道連れとすることができる。しかし街道脇の宿屋に泊まるときには、東の宿と西の宿に別れなければならない。

東国の者と西国の者が同衾したくば、砦に付属する宿に泊まる。砦は街道をまたぐ門を土台として築かれ、高みから四方を見渡している。

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◆検閲街道領Ⅲ◆

大きな砦には図書館が併設されている。むろん東の書物は東、西の書物は西にしか持ち出せないが、図書館内では双方の国の書物を読むことができる。

図書館には両国の作家や詩人が、執筆のために逗留しているのをよく見かける。街道領内で書き起こされ書き上げられた書物は、東西両国で流通することができるからだ。彼らは熱心に東西の書をひもとく。吸収するためではなく、離脱するために。

両国での流通を所望する書物は、街道領出自外の書物から引用する事は許されず、厳重に検閲される。

検閲官は短命である。引用という事態の定義が微妙であるゆえ、もとより完璧を期すことが不能な任務であり、常に高度な超越論的思考を強いられるためである。検閲官は、検閲管制官によって定期的にその判断力を検閲される。

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◆検閲街道領Ⅳ◆

検閲管制官は書物たちの合議によって任命される。

このゆえ作家たちは、有力な書を著すことによって迂遠に検閲に介入することができる。