細い塀の上を歩いていくと、2ミリほどの重機が三台、工事中だったがまたいで通る。
工事に反対する小規模な住民運動が起こっているらしい。でも苔か黴にしか見えない。臭いはたしかに人間ですけれど。
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ここには遠足の前日空想された晴天だけが集められている。
希望的な遠足に出発すると、35人のクラスには気に入った人しかいないので、おなじ人が何人もいる。おなじ組み合わせのカップルがいくつもできる。ちがう組み合わせもすこし。
バス遠足なので、目的地はバスだ。バスに着くとみな行儀よく乗り込み、走り出したバスはやがて学校に着き現地解散になる。
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同級生だった妻に付き添って病院に行くとき、妻が「あ、このバスむかし遠足で来たことがあるね」と言う。珍しく晴れた日に。
どのバスも走行中は窓外を風景が流れる。流れが穏やかになり風景が止まるあたりで、バスも停まる。考えだけが止まることができずに慣性によって二人ぶん並んで受付のカウンターまで行き着いて、ぼくと妻の姿のほうに振り向く。