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雪雪/醒めてみれば空耳

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2005-09-05 球形の浮島

_ 私は高いところが好きだ。ちいさい頃から、高いところに登るのが好きで、ふとした拍子に死ぬところでした。高いものを見つけると、無意識に「登り方」を検討してしまいます。たいていの建物は雨樋づたいに登っていけたものですが、最近は雨樋が外側に露出していないので難しくなりました。

大学生の頃は、登る事が想定されていなかったり施錠封印されていたりして容易に登れない図書館や大学院棟の屋上、建設中の管理棟の鉄骨の枠組、あるいは学内でいちばん大きな講堂の屋根によく登っていました。大学は小高い丘の上にあったので、遠くの海まで一望です。水平線のすこし向こうにいる船も見えます。講堂のてっぺんのモニュメントに名前を書いてきたら、大きく書き過ぎて、キャンパスから黒い点々が見えるので、在学中は気づかれないようどきどきしていました。

自分の立脚点から、架空の立脚面を想定したとき、その平面がほとんど空中を通ってゆくような場所、平面の下に空間が多い場所が好きみたいです。限りなく透明で水底まで光が届く岸壁の際に立っているときの水面のように、平面を思い浮かべるのです。

知人の表情や日々の出来事や読んでいる本のなかにも高いところを探してしまいます。高いところを見つけると、嬉々として登ってしまう。高いところでは興奮しているので「わー、すごいけしき」としか言えませんから、下りてきてから地に足をつけて考えます。

地に足をつけて考えているとき、通い慣れたさして心を奪うものもない町内を歩いているときなどですが、ふと立脚面を想定してみると、平面は果てしない虚空に広がっていることに気づきます。地球が丸いからです。

水面下ぎりぎりに地球を浮かべた、宇宙の大きさの湖。