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雪雪/醒めてみれば空耳

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2005-02-27 集散地

_ ただ球形であれ。傍らに佇むみずからを見出すまでは。

濡れなさい、しかし。

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世界にまだ想い出がひとつもなかったころ

雨もまた降りかたを知らずにいた。

滴ることが可能になるまでは、溜まることも流れることもしんねりと黙り込んだままで。

液化の寸前でためらわれ、流動に向かうよろめきをこらえ、落下は重力に上の空で

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ぽかんとして。

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咲くという行為を発見したばかりの花。

「思わせぶり」に沿ってなびいている。泡立つものをけどりながら、時の岩場を昇るようなたどたどしさでそよぐ。

(呼ばれる虫はまだ存在していない)

散発的に芽吹く主語さえ収まりかたを模索していて、群落してうつらうつらする文の肩を叩いては、自己紹介をしている。

ひょんなことから収まることもある。

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あれかし。

しかし。

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世界の肌理は半睡のまま湿り気を呼び露を帯び、拍子を合わせてぱたぱたと扉、扇、瞼めいて振り返る蜜柑様光沢の表情を、及ぶかぎりの次元の隅々まで羅列している。台所の隅まで。ぴっちり。

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橙色。

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いちめんの橙色。

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眼に沁みる橙色の匂いのなかで瞬きながら、今日も取引に行く。橙色と橙色のあいだにも道はあると知り。知り初めし。知ることの。知りながらの。

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まだ固体に近い花々の波は、流れきたる方向に乗ることができる。

そこを取引が行く。

肉のなかに潜り命を取りにゆく刃物のように。

(二枚綴りの、伝票を持って)

とある色と隣接する色のあわいを。

行く。

(進化の支払いに釣りがあるとき、きまって小銭がない)

置く。

(まだ固い波のうえに)

なにをか。

なにをか。

(さては想い出をか)

.

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触れず交叉するところを知る曖昧な交易のいとおしさ。可愛さ。滲み出してくる。しんわり沁みる。

見開いた眼球に、橙色が歩いてくる。

.

.

濡れなさい。