「<地を歩む星>よ。そなたの臣民が待っている。たとえようもなく長い年月を待っている。北西に向かうがよい」
透きとおるような気配の、樹牌師の言葉にしたがって、エピピエから北西に向かって歩いた。
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郷愁は赤かった。夕映えに赤らむ平原を背景になお赤かった。それは北西の彼方から飛んできた。風を縫う糸のように、きらめく軌跡を引いて。嬉々として。
そしてウィンジュレーの瞳孔を蔽う涙に着水した。一瞬眼が燃えた。熱のない火で。
轟音のような懐かしさが心の内壁を乱打し突然の祝祭のように炸裂したが、たちまち歓喜の残響を残して遠ざかってゆく。減速が追いつかず、表層を通り越していったのだ。
ウィンジュレーは振り返り、自身の奥地のほうへ落ちてゆく赤く澄んだ光を、心眼で追った。その行為は同時に、井戸の底に落ちる灯心を見るように、彼に自分の深度を測らせもした。心細くなるくらい深かった。
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失われた故郷を見出したこの最初の詩塵の名は、後に<地を歩む星>の星都の名になった。人の言葉にそのまま写すことはできないが、ウィンジュレーが口ずさむときは「インチェルトハーピ」と聞こえた。