三日ぐらい先のいつものバス停で、未来が立ち止まっている。
肩をすぼめ、俯いている。
そんな未来を見たことがなかったから、ぼくも立ち止まってしまう。
過去はぼくの背中に押し寄せてみしみしひしめく。それでも現在を追い越すわけにはいかないので、透明な壁に吹き付ける雪のように、ぼくを縁取り円く吹き溜まっていく。
夕刻がこないまま、黄昏だけが眉を曇らせ降りてくる。叱ろうか、なだめようか迷っている先生の表情で。ずり落ちたメガネを、中指でなおしながら。
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乾いた眼球の海に、一滴の涙が落ちる。
かすかなひびき。
それはすぐに途絶えるけれど、瞬きの波音がそこから広がり始める。
涙腺の復活が遠洋から岸辺へ、川を遡って湖へと波及してゆく。
潤いゆく水の瞳瞳瞳瞳瞳、ゆらぐ瞳たちに空が映りゆらぐ。
数年ぶりに風に、涙のにおいが混じる。