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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-03-22 叙景集

_ 581

突如鳴り渡る鐘の音が、立ち並ぶ塔からひとりずつの姫を叩き落とす。

当たりくじ付きの石畳に。

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_ 582

◆物心◆

使われることに慣れていない言葉が、じぶんの意味を探している

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_ 583

三日ぐらい先のいつものバス停で、未来が立ち止まっている。

肩をすぼめ、俯いている。

そんな未来を見たことがなかったから、ぼくも立ち止まってしまう。

過去はぼくの背中に押し寄せてみしみしひしめく。それでも現在を追い越すわけにはいかないので、透明な壁に吹き付ける雪のように、ぼくを縁取り円く吹き溜まっていく。

夕刻がこないまま、黄昏だけが眉を曇らせ降りてくる。叱ろうか、なだめようか迷っている先生の表情で。ずり落ちたメガネを、中指でなおしながら。

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_ 584

乾いた眼球の海に、一滴の涙が落ちる。

かすかなひびき。

それはすぐに途絶えるけれど、瞬きの波音がそこから広がり始める。

涙腺の復活が遠洋から岸辺へ、川を遡って湖へと波及してゆく。

潤いゆく水の瞳瞳瞳瞳瞳、ゆらぐ瞳たちに空が映りゆらぐ。

数年ぶりに風に、涙のにおいが混じる。