「電車の切符を買おうとしたらさ、財布を忘れててあせったー。あやうく親友の結婚式をすっぽかすところだったよー」彼は屈託なく笑って言った。
式の後、彼のご祝儀袋を開けてみると、一万九千八百二十円入っていた。
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「まとまっているものは必ずばらばらになる。ばらばらになったものがまとまることは珍しい。
まとまるものよりばらばらになるもののほうが多くて、まとまるための時間よりばらばらになるための時間はじっと短くて済むから、世界はいずればらばらになる。
そもそもどうしてまとまったものがあるのだろう?」
砕けた石盤を復元すると、そんなことが書いてある。
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合わせ鏡の奥に向かって四百七十七枚目の鏡像を発ち、五百六十五枚目の鏡像までやってきました。このあたりではほとんど旅人に出会うこともありません。もっと浅いところにいる人たちの、おぼろな影がゆらいでいるだけ。
だいぶ体も慣れてきたので、あまりひとつところに留まらずに、先に進んでゆけそうです。
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去って行った一日を、遠い異国でたまたま見かける