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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-03-10 叙景集

_ 560

「電車の切符を買おうとしたらさ、財布を忘れててあせったー。あやうく親友の結婚式をすっぽかすところだったよー」彼は屈託なく笑って言った。

式の後、彼のご祝儀袋を開けてみると、一万九千八百二十円入っていた。

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_ 561

びっくりした。

いきなり話しかけてくるから。

犬が。

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_ 562

「まとまっているものは必ずばらばらになる。ばらばらになったものがまとまることは珍しい。

まとまるものよりばらばらになるもののほうが多くて、まとまるための時間よりばらばらになるための時間はじっと短くて済むから、世界はいずればらばらになる。

そもそもどうしてまとまったものがあるのだろう?」

砕けた石盤を復元すると、そんなことが書いてある。

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_ 563

【ハスタリ】

窮理の寺院の僧たちが、平静なる精神を保持する修行のために服用する毒薬。感情の昂ぶりによって効力を発揮し、興奮の程度に伴い毒性を強める。

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_ 564

河岸公園でくちづけをしたとき、背中で聞いた不意の喝采。汀を飛び立つ水鳥の群れ。

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_ 565

合わせ鏡の奥に向かって四百七十七枚目の鏡像を発ち、五百六十五枚目の鏡像までやってきました。このあたりではほとんど旅人に出会うこともありません。もっと浅いところにいる人たちの、おぼろな影がゆらいでいるだけ。

だいぶ体も慣れてきたので、あまりひとつところに留まらずに、先に進んでゆけそうです。

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_ 566

去って行った一日を、遠い異国でたまたま見かける