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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-03-11 叙景集

_ 567

感情がくるりと回るけはいが、あなたから伝わる。看護靴のかかとが、キュッと鳴る音のように。

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_ 568

少しずれた空にあおざめた月がかかる。折れた頬骨を癒すこともなく。

西の岸辺の森は、みずからの吐く息にけぶり、うすく引き延ばされた唸りにふるえ、風を刺し陸を噛む。

夢みがちな海賊が、思い出したくない思い出を売り飛ばしにいく忘却の航路。

値札の付いたわたしは、甲板でこぶしをいたわっている。 いちどだけ月までとどいたこぶしを前歯で噛む。

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_ 569

ずるりと沼に這い込んでゆく軟体の街の、擬脚の先端にある学校に登校するレインコートのおさない爬虫類たち。

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_ 570

頭上で電話が鳴っている。

雲をふるわせて、いつまでも、いつまでも鳴り続けている。

洋上をゆく渡り鳥たちには、その意味も、どうしたらよいのかもわからない。

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_ 571

私の中で50メートル泳いで、這い上がってきたあなたが、私を滴らせながらシャワールームへ歩く。

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_ 572

昨夜巨きな人が山から出て、田頭から只見沼のあたりまで燐粉に沈めてしまったので、手の空いた者は総出で浄伝寺の縄喚びの黒鏡を持ち出した。堰の水をできるだけ太く綯うと、あやかしの跡を睨める者が先導して、青らんだ道をその水で縛った。

音垣屋の次男坊が農協から帰ってきしなに、結び目に気付かずにバイクごと突っ込んで、大事には到らなかったがその後五日ほど、前触れもなしにびしょ濡れになるので風邪をひき込んで伏せった。