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雪雪/醒めてみれば空耳

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2003-07-16 叙景集

_ 273

わたしの視界から逸れてゆくわたしの視線

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_ 274

◆夕刻◆

木の間から見える低い家並に灯がともりはじめるころ

まどろんだまま自転車を走らせるぼくのうしろをついてくる 鐘の音だけでできた森から

とりどりの風鈴の群れがいっせいに飛び立つ

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ぼくの頭上を追い越してゆく色と音色の夕立

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_ 275

世界は風の生まれるところに取り巻かれ、水平線が眼にとどく光によって描かれるように、風平線は肌にとどく風によって描かれている。

それはふれることができる彼方の景色。

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_ 276

月はいつも地球を見詰めているから、新月のときには太陽を見失っている。

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_ 277

「睡っている時間が日に日に長くなると、夢のほうがほんとうの生活になるのよ」

睡ったままで言った少女は、私を夢に見ている。

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「醒めている時間が日に日に長くなると、現実が夢になるのです」

なにもかも悟ったように語る男は、私に夢見られている。

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そう話している私はいま、醒めているのか睡っているのか。