_ 降ることを忘れた雨が
中空で途方に暮れている
はんぶんは雲であるまま
もう雲にもどることはない
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下界では濡れることを忘れた舗道が
意味不明のわらべ歌のように
「しとしとしと」と
口ずさんでみたりしている
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待ち切れずに落ちた木の葉ができるだけ宙にとどまろうとして
右から左へ
そしてそのいきおいで右へ
空気の坂を駆け上っている
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ざわめく街は津波の直前に引く潮のように
うごくものもうごかないものも
けはいとともに
遠ざかってゆく
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世界の進行を遅らせている
なにか張り詰めたもの
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雨も舗道も街も
それが破れる瞬間を
知らず
待たされている
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君が涙をこらえている今