学校から帰ると、キッチンのテーブルの上にお母さんからの書置きがあった。
「箱の中の島々からお嫁さんを二人もらってくる」
お嫁さんを二人もなにに使うんだろう?というよりこれじゃ、お母さんが行ったのか、ぼくに行けというのかわからないじゃないか。
ぼくは覚えたばかりの舌打ちをしてみる。
「ちっ」
うまくいったのでもう一回してみる。
「ちっ」
ぼくの名前は時計ではない。
「ちっ」
おなかがすいてるけど出かけなくちゃ。
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おそろしい魔道書というふれこみだったが、おもしろいばかりだ。どうにもおもしろいので読み進むごとに妻や同僚に話して聞かせていたが、みないやな顔をする。どうしてわからないのだ、おもしろがっているのは俺ではないのに。
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「おまえはくびだ!」という夢から醒めた途端、海に落ちた。
一帯に背広姿の眠った男が、次々落ちてくる。
水煙の音符。オシロスコープ。
落ちた男の上に落ちてくる男もいる。
「雇ってくれえ」と誰かが叫ぶ。