_ この世界を離れて別の世界を目差すひとむれの人々と今しもすれちがいつつある
絶望を通過したあとの希望と絶望のなかに歩み入る希望とがつまさきで立ち止まったまますれちがいつつある
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この世界の不幸は もしかすると別の世界で幸福に転ずるのかもしれないし
転じないのかもしれない
別の世界の幸福は不幸と呼ばれているかもしれないし
なんとも呼ばれていなくて
こまるのかもしれない
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雪かと思えば名前である
雪というにはほんのりとおぼろで
付くことのできるあらゆるところに付こうとして
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私の不幸があなたの幸福であるとき
私があなたになるとき
あなたが彼女である私であるとき
彼女である世界が名前である私の幸福であるあなたの不幸であるとき
名前である不幸が世界である私の幸福であるあなたの彼女であるとき
名前のように世界がふる 幸福と私に
名前のように名前がふる あなたと名前に
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しんしんとふりこめる沈黙のように鳴きつのるものたち
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言葉は 定義するために遠くに見える網膜
私を離れてあなたに行きたがる私
さもなくば
世界を離れて 別の世界に到着しない旅程
そして
倒れ方を知らずにとるバランス
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水のような未来で素足を濡らして
つま先立ったまま涙だと気付いていた