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雪雪/醒めてみれば空耳

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2003-05-18  どこか遠いところに目配せ

_ 夕暮、椅子に腰掛けて、死について独り言を呟いていた。できるだけ暗い気分になりたかったので。

女の子が一人向かい側に座っていた。女の子のようには見えなかったけれども女の子だということは分かった。

「私も、ずっと死ぬことにあこがれていたの」そう言って、あとは時折相槌を返すぐらいで、黙ってぼくの話を聞いていた。ぼくのほうは喋りながらぼくの話を聞いていた。

ながながと話した。今日はじめて会ったのに。

いくらでも話すことはあった。

_ ふとぼくの言葉が途切れたとき彼女が言った。

「あなたの話を聞いていると、どんどんどんどん生きたくなってくるわね」

うん。じつはぼくもそうなんだ。

_ いつの間にか男が一人、そばに立っていて、挨拶抜きで口を挟んできた。

「誰だって死ぬ時は死ぬんだ。生きるも死ぬも意味なんかない。詩人気取りで死のことを口にするのは滑稽だ」

まさしく。

「うん、その意見には同意するよ」ぼくが答えて、彼女とぼくはくすくすと笑った。

もちろんおたがいの声は聞こえなかったけど。

ネット上だから。