「みっつだけ、なんでも願い事を叶えて差し上げます」
「わたしが願って後悔しない願い事をふたつ教えたまえ」
「はいはい、『生まれてきたい』『生まれてきたことを認識したい』。これなら後悔しませんな、あなたは」
「それはとっくに叶っているじゃあないか」
「じゃあ、取り消しますか?」
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睡るものと吠え猛るもの、そして雫を垂らすものが旅をした。
眼にごみが入った惑星でおちあい、ノルウェー202経由で<座っている猫の後姿>βを斜めによぎり、杜若の殻竿まで。
雫を垂らすものが旅先で読むために持ってきた三冊の本を、かわりばんこに読んだ。
吠え猛るものはペースを合わせるためにゆっくり読まなければならなかった。おかげで、睡るものの感想も、ふだんより腑に落ちた。
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