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雪雪/醒めてみれば空耳

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2003-02-10 叙景集

_ 076

「このようにして、就寝前に設定したとおりの夢を見ることができる、というわけです」

「 “夢の内容を自由に設定できるという夢” という設定にすれば、夢のなかで設定を変更できますか?」

「ええ、まず “それが可能な現実のなかで見られている夢” という設定にすれば可能ですよ」

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_ 077

まだ卵から孵ったばかりの博物館。こーんなにちいさいのに、もうずいぶん分類本能と陳列力があるんですよ。そのせいで兄弟間の競争けっこう熾烈なんですけども。

あ、ほら!蒐めてます、蒐めてます。かわいい鑑識眼してますよね〜。クリクリっとして。

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_ 078

踏切の音、そして通過する列車の音。常温の突風。石が関節を曲げるときのような震動。

意味はわからないなりに、この組み合わせは樹木だったときにも聞いていたように思う。むろん鼓膜を介してではないが、しかし歌として、なかまたちとともに。

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_ 079

「それは最初の神経、最初の眼、最初の翼を虚空から呼び出した力とおなじものよ。墨痕のかすれや、釉薬のひびわれ、水のように震える弦、忍び足のような脚韻、母親の目配せ、想いびとの移り香、はじめて見る雪、血に濡れた歯形、じぶんの内臓が腐敗する臭い、または記憶にない記憶。それは過去のななめ後ろから訪れるもの。赤ん坊の瞳の奥にあるほのめかし。虚空からなにかを引用して、わたしたちに書き込もうとする力。—無限回試行されて、ほとんどは失敗に終わるんだけどね」

「それが〈風情〉の定義なんですか?」

「定義じゃないわ、設計思想よ。それか、理念」

「すると、この場合“失敗のほうが主目的”と理解すればいいわけ?」

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_ 080

白の時間と黒の時間は「滅び去るとはちがう消え方」の先生です。

白の時間は、じぶんがどこに落ちるか知ってる雪みたいに優しい。

黒の時間は、ほっぺをふくらまして怒るクジラみたいに怖いけどかわいい。

帽子を取るとふたりとも、帽子のなかに入るわけないながーい角をしてるんだ。角の名前は長くて憶えられないけど、日本語だと「進化の袋小路」っていう意味だって。

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_ 081

あの天井から鍾乳石みたいにさかさまに垂れ下がっているのが、お城ですよー。

あそこからはみんなが鳥に見えまーす。さあさあ、練習どおりみんなでさえずってみましょう。じょーずにできると、なんと!エサが落ちてきます。

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_ 082

「あれはなんという生き物ですか?」

「ふむ、新種ですね。あなたが発見者です」

「じゃ、命名していいんですか?」

「どうぞ。命名します、と宣言して、名前のみを発声して五秒以上沈黙してください」

「それはなぜに?」

「命名の瞬間は物理科学的には確定できませんから、儀式的に確定するんです」

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_ 083

いままで未来の方向が前だと思っていたのだがあらゆる方向から時間が流れてくると時間的自由落下状態になってしまってどっちがさっきなんだかあーなんかわけわからんぞ書き進むってこっちでいいんだっけ?うーむ、一応このくらいの字数だとひと目で見られるからなんとかなるもんだな。実感として全部の字を同時に書いたみたいで気色わりいけど。

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_ 084

「夢のなかでパズルみたいにパキっとはまってきたよ」

「なーにがですかな?」

「あの内心の犬が運んでた記憶だよ」

「そういえば姿がありませんな。昨夜はエンデュラムの槍に寄り添って眠っておりましたが」

「役目を終えて雲散したか、それとも<姫>の許へ帰ったか」

「帰っていたらやばいですなあ」

「やばいなあ。<姫>ってレーレンドールの弟子なんだろ?」

「一番弟子でしょうな」

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_ 085

明日は君の死体を見に行こうね。くわしい解説も付いているんだよ。実はぼくが書いたんだけど。ラヴレターだと思って読んでよ。黄鉄鉱の結晶に彫ってあるんだぜ。そうだよ、あの日君といっしょに盗んだやつさ。

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_ 086

終戦の報せを雲が、詩のように引用している

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_ 087

【南南西天間隙】

脳裏と天球に同時に存在する天然の要害。参照あたわぬ領野と黙許された領野のあいだを隔てる。間隙の向こうには隠秘なる知と夢が、触れる者もなく凍結しているといわれる。

レーレンドールが踏み越え、帰還をみなかった「エンデュラムの関門」は、南南西天間隙のカリフィア風の呼称(エンデュラムは超々長期記憶の意。カリフィア神話の記憶の神から)。

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_ 088

「邪魔くさいなこの記憶。ひとりでに思い出してるし」

「よみがえらせた記憶とよみがえってきた記憶の区別がつきますか」

「だっておれが持ってるはずのどんな記憶より懐かしいもの。それなのにもっと懐かしいはずだって記憶のほうがさびしそうにしてる」

「それで泣いておられるわけですか。どんな記憶です?」

「前歯で噛むと……蜜柑のにおいがする切符の記憶」

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_ 089

「めがねっていいねー。上向いて雪降ってくるとこ、見てられるもん」

「めがねに積もるぜ。三〇秒で」

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_ 090

「残念ながら色彩だけが参加を許された祭りなんですよ。踊りを見るだけなら見られますけど。それとも、お客さんの肌の色だけ参加します?」

といういきさつで、わたしの肌の色はいそいそと出かけ、わたしは朝になっても帰ってこない肌の色を待たされる羽目になった。

もしかして、わたしの肌の色らしきもの、見かけませんでした?もう、このまま出かけちゃおうかしら。

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_ 091

ピアノ弾きが上の空でピアノを弾いているとき、音楽よりもその上の空のほうが、とっても「聞かせる」ってことあるよね。

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_ 092

このへんは昔海だったんだよ。でもちょうどここまで。この団地と・・・あの小学校からむこうはずっと陸。うちの町内は海だったり陸だったり。そら?そらってなに?ああ、あの空か。当時はまだなかったね。たしか市制三〇周年の記念事業で造ったんだよ。

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_ 093

そうではないのです。スイッチを切ってほしいのではなくて、眠り方を教えてほしいのです。実際に眠りながらご指導いただけないでしょうか?とても、どうしても、眠ってみたいのです。

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_ 094

「書かないことを書くって、見えないものを見る感じ?」

「ちがいまーす。かゆいところは誰かにかいてもらったほうが気持ちいいって感じです」

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_ 095

……冥豹は、さほど豹に似ているわけではない。姿形は四足獣のかたちに切り取った夜空。非常な長命とされる。少なくとも屍骸を見たという信頼できる報告はない。そもそも出会うことが稀である。

冥豹の餌食になった者は肉体は消化されるが精神は体内に残る。つまり冥豹の寿命のあいだは思索を続けることができる(冥豹は異界の知覚しか持たないため、食ったものの心を通じてこの世界を知覚し理解するのかもしれない)。

……伝え聞くところによれば、アシュカンテの密林に秘匿された窮理の寺院に、一頭の年ふりた冥豹が飼われている。その体内には代々の高位の僧たちの心が収蔵され、正しく問う者にのみ、古今の、解き難き謎の答えを分かち与えるという。

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