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雪雪/醒めてみれば空耳

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2003-01-16 微小にして断続的な夏

_ 大きな人工水路沿いのうねうねっと屏風みたいな家並みを、うねうねっと自転車で走る。

先の方にあるブロック塀になにかぶら下がっているのが見える。黄色いものと水色のものと薄桃色のもの。べったりと背の低い木造の家の塀だ。

近づいてみると男の子がふたり女の子がひとり、四年生か五年生くらいだろうか、塀の上に脇を懸けるようにして、並んでぶら下がっている。声を交わすでもなく、前を向いたままじっとしている。こんな奇妙な光景を見たのはひさしぶりだ。好奇心を抑えられず自転車を止める。

「なにしてんの?おまえたち」

「風鈴聞いてるの」

言われてみれば確かに、軒先に下げっぱなしの風鈴の音が、なけなしの風でかすかにひびいている。夏に涼しい風鈴の音は冬聞くと寒い。

俺がガキのころはがさつで落ち着きがなく、風鈴の音に聞き入るような気の利いたところはなかった。塀にぶら下がって冬の風鈴に聞き耳を立てる子どもは風鈴より風流だ。ひとり持って帰って、うちの軒先に掛けておくか。