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雪雪/醒めてみれば空耳

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2016-08-19 知っても知っても未知なるもの

_ ジャック・ヴァンス・トレジャリーとはなんとすてきな企画であろう。国書刊行会ばんざい。初回配本『宇宙探偵マグナス・リドルフ』の現物を見るまで、出るのを知らずにいたうかつな私。

傑作揃いだなんて口が曲がっても言えないが、いいのだ、未読のヴァンスが読めれば。この使い込まれて手すさんだ民芸品のような読み心地さえ味わえれば。

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解説にJ・R・R・マーティンのコメントが引かれていて、ぐっとくる。

「ジャック・ヴァンスは、ぼくが意識して模倣を試みた、あとにも先にも、たったふたりの作家のうちのひとりだ」って。そしてもうひとりはH・P・ラヴクラフトだそうである。

ぼくはマーティンの大ファンではないが、好きで好きでたまらない部分があり、それはまさしくヴァンスとラヴクラフトのにおいが嗅げるところなのだと、腑に落ちた。そういうわけで、マーティンでいちばん好きなのは代表作というわけではない短編「ストーン・シティ」の導入部で、ここはコードウェイナー・スミスを思わせるのだが、それはつまりヴァンスとラヴクラフトのにおいがいっしょに香るとコードウェイナー・スミスのにおいになるかと、重ねて腑に落ちた。

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ここで言うラヴクラフトは、一般像ではなくてただひたすらドリームランドもののラヴクラフトであって、東京創元社の『ラヴクラフト全集』を編んだ大瀧啓裕氏が、「自分にとっては『カダス』あってのラヴクラフト」という意味のことをどこかで書いていたように、ぼくもそれにほぼ同感で、その『カダス』、つまりドリームランドものの軸となる長編『未知なるカダスを夢に求めて』を含んでドリームランドもので固めた全集第六巻ばっかり読み返しているのでした。六巻だけ、三冊くらい持ってると思う。

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