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雪雪/醒めてみれば空耳

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2013-05-26 世界4に向かって

_ 角川ソフィア文庫の新刊、池田清彦の『生物にとって時間とは何か』は、哲学書房から出ていた『生命の形式―同一性と時間』の改題文庫化です。文庫版あとがきに「ここ十数年の間に書いた本の中では、最も心血を注いだものであると同時に、最も売れなかったものでもある」とありまして、池田清彦は、ここ十数年に共著も含め50冊以上の本を書いているから、その中で「最も売れなかった」とすると、哲学書房が涙目になるくらい売れなかったにちがいなく、文庫化に踏み切ってくれた角川学芸出版の先行きが思いやられる。

ぼく自身親本を手にしたことはなかった。初刊時の2002年にこれを読んどいたらよかったのにようほんとにもう。なんで見逃していたんだかなあ。

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時間に関する本は、とりあえず手に取ってみるほうだが、たいていマクタガートが出てきて、狭いとこ狭いとこに潜り込んでいくような窮屈な議論に終始することが多くて、まあそれはそれで面白いのだが「またマクタガートかい…」と呟いてしまう今日この頃であったけれども、この本の池田先生の筆致は滑りに滑って、彼方へ向かって飛び立たんばかりに幾度もはばたく。

扱っている範囲が広過ぎて粗っぽいところもありますが、めっちゃ刺激的です。こういうメガロマニアックに広闊な世界像を扱った本としては、デイヴィッド・ドイッチュ『世界の究極理論は存在するか』以来のおもしろさでした。

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ちょっと目次から抜き書いてみるが、「時を含まない約束」「時間を孕む固有名の同一性」「クオリアとコトバの非対称性」「生物たちは拘束されつつ、非決定論的な未来を夢みている」「生物と物質で異なる時間の速度」という具合で、これを見ただけで「すぐ読みてえ! 一刻も早く読みてえ!」と思う人は思うだろう。

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議論の過程で援用される「オートポイエーシス」「クオリア」「内部観測」「アフォーダンス」といったおなじみのわやわやな概念も、提唱者が言うよりむしろクリアに表現されていて好適である。特にカール・ポパーの世界1(自然/物質の世界)・世界2(思考/主観の世界)・世界3(言語/記号の世界)という分類を応用して、それぞれの相互作用の諸相を整理してくれる第2章が圧巻なので、2章から読み始めてもよいかもしれん。

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_ 内輪な話で申し訳ないが、5年ほど潜伏し始める直前には、プライベートな掲示板で、理屈を言うのが大好きな友人数人と、まだるっこしい議論を繰り返して超楽しかったのであるが、あの頃ぼくが「原初的なふたつの時計」とか「名前はどのようにして『付く』のか」とかいうフレーズで言おうとしていたことの七割くらいはこの本に書いてあるので、これを読んでおいてくれれば、つづきが喋りやすいです友人たち。もうはばたきたくてうずうずですよw

本日のコメント(全7件) [コメントを入れる]
_ シゲ(ガテンコ) (2013-05-27 20:14)

お久しぶりです!早速注文しました! <br>早くつづきが聞きたくて仕方がないのですが、以前性急になんでも理解しようとしすぎた反省から、じっくりいきたいと思ってます。なので、突然消えたりしないでね。 <br> <br>掲示板、残ってますよ。ぶらっと来てぽつりと書き置くだけになっていますが、みんな今も覗いてるみたい。 <br>場所が分からなければ教えたいけど、どうしよう。 <br>

_ 小松 (2013-05-29 18:37)

こんばんわ。 <br>今日はお薦めしてくださって、ありがとうございました。 <br>また寄らせてください♪

_ 雪雪 (2013-05-30 02:44)

シゲさんへ>掲示板。きっと膨大なメール群のどこかにアドレスがあるんじゃないかな。探してみる。 <br>つづきは、もはや懐かしい「幼生の妖精による養成のための要請(だったよなw)」のつづきとして書こうと思ったら、ちょうど妖精んとこが読めないのであった。妖精に拒否られてるのか。それとも放置し過ぎて忘れられたかな。

_ 雪雪 (2013-05-30 02:49)

小松さんへ>いっぱい薦めてごめんなさい。また寄ってください。小松さん対応の本を喚び集めておきます。

_ ナナイ (2013-06-01 07:48)

おすすめいいなあ。ナナイもいるー!

_ 雪雪 (2013-06-02 00:09)

ナナイ>もう読んでるかもだが『ピダハン』、『亡びゆく言語を話す最後の人々』、『言語の誕生を科学する』、『理系の子』、『カフカ式練習帳』、『ぼくは覚えている』、『星座から見た地球』、『茨文字の魔法』、『都市と都市』、『もうひとつの街』、『Boy’s Surface』、『神は死んだ』、あと古いけどストルガツキー兄弟の『ストーカー』は、お散歩ものの白眉。知らないのがあったら検索してなー。あと『2』(これは検索しにくそうだな。野崎まど)。それから合うか合わないか予断を許さないがいまいちばんおもしろいマンガは『蒼き鋼のアルペジオ』です。ゆんべも7巻読んで壮大に泣きそうになった。あと本ではないがクリストファー・ノーランの『INCEPTION』は、いっぱいいっぱいおもしろかったです。 <br>追伸、牧師の友達がいるのは『トライガン』。

_ ナナイ (2013-06-02 08:49)

息つくひまもないタイトルにぜんぜん感嘆がおさまらないけど書く。微塵からのクオリアだよう。タイトル抱えてうろうろうろうろしてます。親愛なるオルファウスの夢も叶いますようよろしくお願いします。わたしの夢は叶った。ねえ、ひとつだけ叫びたい。ト ラ イ ガ ン それだーーー☆きたーーー☆どこからーーー(´艸`) 追伸、一冊ぐらいあってもなのに…もう読んでる本が一冊もない…w