_ 困っている。
二階堂奥歯のことを話すのも尋ねられるのも、苦痛ではない。彼女だけが教えてくれたことがいくつもあり、それを言葉にしてみたく思う。
しかしそれも、考えたくないときには「考えたくない」とも思わずに考えずにいられる緩みがあればこそだ。忘れていられる時間があるからこそ、いきいきと思い出すことができる。危険含みな想いが脳裏から去らないとき、無意識はそれを表層に気付かれないように隠蔽する。忘れられないせいで、思い出せなくなる。それは困る。
二階堂奥歯についてなにか書く。それが予定として、未来にいくつも待っているとなると、指がすくんでしまう。なにを書くか書かないか、考えないわけにはいかず、いつも心の片隅に二階堂奥歯がひっかかっているのは、楽ではない。少なくとも、まだ苦しい。この先苦しくなくなるかどうかはわからない。
ぼくは無理をしない。それは私的な「生き続ける知恵」である。知らず知らずのうちに無理をして、衰弱するタイプなのだ。だから無理にでも無理をしない。楽な道を選ぶためなら、たいていの困難や摩擦に耐える。
ぼくは他人より自分を大切にする。他人より自分に期待しているから。そういうわけで、「メールが書けないな。どうにかならないものか」と、無理しない程度に、慎重に苦悩している。
申し訳ありません。
つまりは、可能ならば見捨てないでください、嫌わないでくださいと、甘えているのである。
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評判の『ゴーレム100』を読んだが、ぼくはやっぱりベスターなら『コンピュータ・コネクション』が断然好きだ。すごくたくさんの「書かれていないこと」を思い付くから。複雑にかわいいし、微笑ましく壮大だし。人類史が明けて暮れる束の間に、長屋で起こったひと騒動みたいな。
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正面レジ前に、スタッフが自分の大好きな絵本を持ち寄って大展開している絵本フェアの一番人気は田中清代『トマトさん』。手に取った人は魅入られるように買ってしまうようだ。福音館で買切だもんでへっぴり腰で補充しているから何度も切らしてだいぶ売り逃しているのだがぶっちぎり。
次いでいせひでこ『ルリユールおじさん』。よい。名作『むぎわらぼうし』を超えた。読み返すごとに好きになる。本が好きな人は眼を細め、うんうんと頷きながら読み、孫を抱きしめるように抱きしめてしまうであろう。いせひでこの魅力は女性画家の眼と男性画家の眼を兼ね備えているところだと思う。魚心と水心を同時にくすぐってくれる。繊細な作物だが敷居は高くなくて、読者の視線をしぜんに細部に導いて、きらきらに磨いてくれる親切な本だ。
ぼくの好きな成田雅子の『やくそく』も四冊売れてうれしい。
わたし、雪雪さんを知ってから書店員さんって素晴らしい仕事のひとつなんだなって気づくことができました。こどもが生まれて「MOE」読者になったのですが、『ルリユールおじさん』も『トマトさん』も気になっていた作品。『やくそく』も是非読んでみたいです。早くこどもが本の楽しみを知ってくれるといいなと思いつつ。色んな本や、世界の見え方を教えてくれてありがとうございます。これからも楽しみにしてまーす
本屋に立ち寄ると真っ先に児童書のコーナーを覗くのですが、絵本が充実している所は中々ないですよ。申し訳ないと思いながらも、古書店の方につい足を向けてしまう事も少なからず。インターネットでつい注文してしまう事も少なからず。<br>こんな風に本の名前を挙げてくれると、本屋に行くのが楽しくなります。読んだ事がない本なら更に楽しくなります。<br><br>いせひでこは「絵描き」に何度か手を伸ばしておきながら買ってません。「ルリユールおじさん」と一緒に買ってしまいます。
☆urikoさんへ<br>書店員は、ほんとうに素晴らしい仕事です。<br>書店員は、本の許へお客様を案内する仕事ですが、お客様の許へ本を案内する仕事でもあります。だから書店員は、自分の関心のない本たちとも、出会っておかなければなりません。<br>なにかをお探しのお客様に「いらっしゃいませ。どのような本をお探しですか?」と尋ねるときのように、誰かを待っている気配をたたえた本が入荷してきたときは、「いらっしゃいませ。どのようなお客様をお探しですか?」と尋ねるような気分で開いてみるのです。<br>でも自分の偏りのせいで、どうしてもうまく接することのできない本がありますし、ありとあらゆるテーマを扱った本がありますから書店員にとって必要のない知識は存在しません。体験してきたすべての経験が活きる仕事です。そしてどんなに経験を積んでも不足であり、完璧な書店員は存在しません。<br>やりがいありすぎ。<br>けれどもその割りに、「さすがはプロフェッショナルだ」と思わせてくれるような書店員に出会う頻度はあまり高くないと思います。それというのも書店員の給与水準はびっくりするほど低いので、天性の書店員と言えるほど能力のある人は、通常書店員になりません。そういうわけで、もしあなたが、「プロフェッショナルだ」と思えるような書店員に出会ったことがあるなら、その人はほぼ間違いなく物好きな変人です。
☆tairyuさんへ<br>tairyuさんが向かうはずの書店の店頭で、『絵描き』と『ルリユールおじさん』が小躍りするのが見えるようです。
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