_ 嵐の後の透明な午下り、揉まれ疲れた風景が皺びて、凭れかかってくる。脂気が抜け切っていて、重たくはない。木漏れ日が瞬き細密な緑が睫の先で弾ける。過がる風の切片が息となって吹き込んでくる。睡りながら流れる時がむずかり、架空の瞼があける半眼。
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繰り返して称ぶことのできない風景の名前を知覚は、逐次命名してゆく。一瞬でしか称び終えることができない、長い長い名前を。
遠くで狂おしく、唸る風が唱和しようとして果たせない。しかし風には、諦める習性がない。