_ 26日に仙台に帰ります。
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岸田今日子さんが亡くなってしまった。
訃報を伝えるニュースでもほとんど言及されないのだが、彼女は寡作ながら卓越した掌編の名手だった。
あっけらかんとした軽快さ、ほのかな温かみ、脳を挫きそうなる奇妙な展開、そしてにっこり微笑んだ表情と裏腹にナイフを、何気なく根元まで突き刺してくるような毒。
もしもぼくに、超短編のアンソロジーを編む機会が与えられたら、必ず岸田今日子を選ぶだろうし、そしてどれを採るか苦慮するだろう。
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彼女は少ない語数で状況を定着させるのはお手のものだったから、掌編という形式は住み心地ががよかったのだろうと思う。
しかしながらぼくにとって最も忘れ難いのは、彼女の作品群の中でも珍しく短編の分量がある「ひとみしりな入江」であって、一見してすでに心地よく秘密めいたタイトルだけれど、読み終えてみるとこのタイトルの付き方が作品からたなびく煙のように、今にも作品から離れて霧消してしまいそうな微妙な付き方で、このタイトルを作品に付けたときの作者の指遣いに溜息が出る。
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そして彼女の、おそらく唯一の長編小説である『もうひとりのわたし』も、忘れることが困難な作品だ。
ぼくも想像の翼に関しては思い切り羽ばたかせるほうだから、頭の中には迂闊に人に言えない発想が鬱勃と湧き立っている。けれどこれを読んだときには、とあるシーンで、やられた、と思った。
エッチでした。身をよじるほどエッチでした。よくもまあこんなエッチなことを思い付くなあと思った。先に思い付かれてほんとうに悔しい。
本読みの女友達が、「それってどんなシーン?」と訊いてくるから説明したことがある。そっちから訊いてきたんんだからな、遠慮なく丁寧に説明した。説明が終わった途端、彼女の顔色がさっと変わった。濡れたのだと思う。
無理もない。男であるぼくでさえ、持ってもいないクリトリスから発したなにかが、全身を痺れさせた気がしたものあのときは。
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岸田今日子の作品集は、何度も編まれているけれど、ほとんど入手困難。現存する作品集も悪くはないのだが、探してまで読もうという方には、まずは角川文庫の『一人乗り紙ひこうき』、次いでおなじく角川文庫の『ラストシーン』が、収録作のバランスがよいのでお薦めします。
岸田今日子さんの著作は、いくつか持っていますが、『もうひとりのわたし』は知りませんでした、入手困難みたいですね。<br>その「とあるシーン」を読みたい、読みたい、読みたい!!<br>いつか、チャンスがあったら、ぜひ……
こちらでははじめまして。雪雪さん編の超短編アンソロジー、読んでみたい! 機会がありましたらぜひぜひと思うのでした。
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