_ 唇に速度を与える
しるべにふれて
途中までは登れた坂の記憶
ふるえるように細く
抜け落ちてゆく夜道たちの
しんなりと折り重なる角度を片足ぶん
踏み外して
記述は交錯するとしても
たとえ呼び声は絡み合うとしても
遠い肌からは
届けられるはずの体温が
風に紛れるばかりで
遠くで
やわらかい墓石がまた
倒れる