_ 解決策があっても問題は解決しない。問題はそもそも、解決策への攻撃だから。ゆえに、愛の不在によって生ずる問題に、愛によって対処すれば、愛はぼろぼろになる。
解決策もまた見る人が見れば問題であり、問題もやはり当事者にとってはある種の解決策なのだ。
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恋をして彼女は変わった。彼氏が殴るから、彼女の鼻は少し歪んでいて、顎がかくかく鳴る。以前より眼が細くなった。すっきりした目許が印象的だったので、違和感がある。いつも顔のどこかに炎症があるせいで、腫れぼったいのかもしれない。さもなくば泣き過ぎか。
相談を受ければ友人たちはみんな、「別れなさい」と言うから、何度か別れたけどまた元に戻ってしまう。
「でも、優しいときはものすごく優しいんだよ」彼女はにっこり笑って言う。それはそうだろう。怒りを抑えられないように、彼は優しさも抑えられないのだ。
激しく憎む者は激しく愛す。
強い光があれば濃い影が落ちる。
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もしも、「どうしてこの人はいつも、こんなにも温かくて優しいんだろう?」そう思える人がいたら、その人もたぶん怒っている。
吹き荒れた怒りがあとに残す荒廃を、骨の髄まで知り抜いているから、怒りに対して本気で怒っているのだ。自分の怒りを叩きのめしてしまうくらいに。
あるいは、自分の残酷さに鉄の枷を嵌めて心の底に沈めておけるくらい、残酷さに対して冷酷なのだ。
抑制とは怒りに対する憎悪である。