その村には、家々ではなく漁師が建っている。塩じみた肌に刻まれた深い溝を、さらさらと汗が、肌の色とともに流れくだるせせらぎが聞こえる。
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漁師たちの股のあいだを船たちが行き来しており、船腹を見せてこすり合うのがかれらの挨拶であるらしい、すれちがうごとに舷側を傾けて、ごおんごおんごりごりと接触する。広場の井戸のまわりには船が寄り集まるので、その方角はいちだんと騒々しい。
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船たちの竜骨に学んだものか、このあたりの風には背骨があるので、それを伝って漁師の肩まで這い登ったちいさな海が、並び立つ漁師たちの肩から肩へ、波音たてて跳び移るのを下から眺めていると、親海が空のふりをして見守っているのに気付く。完全に空に溶け込んではいるのだが、目の前を雲が通るときに、子海をみうしなうまいと身動きするので、それとわかる。よほど大きな風の、空まで届く背骨にまたがっているのだろう。むろん風は眼に見えないのだが、風の腰がぎしぎし鳴るのが聴こえてくるようだ。
AFAIC that's the best aesnwr so far!