大地は湾曲した断崖であり、ひとつの日付から次の日付へと落下し続ける。
断崖ごと、海も森も都市もうごくものたちも落ちる。おなじ速度で落ちる。風もともに落ちているから音もたてずに。
まだなにも安心していない赤ん坊が、落ちていることに気付いて泣く。別のことで気が散るか、慣れて感じなくなるまで。
宇宙の壁に等間隔で設置された水銀灯のように、底のほうから太陽があらわれてはたちまちのうちに飛び去る。すべてが落ちてきた方角へ。
私達はうちそろって眼を細め、こうべをめぐらせて太陽を見送る。幾度かは目を逸らす。日々のなりわいをいとなむために。
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レーレンドール駅までの空中軌道はほとんど煌めくことのない透明な素材でできており、行き交う列車は空を飛んでいるかのようだ。
支柱までも透明だから、眼下に広がる緑なす広野までの距離感がわからない。そのせいで、漆黒の建造物がひとかたまりになってぎらりと陽光を跳ね返すさまを見ても、それが大きな霊園なのかはたまた小さな都市なのか判然としない。
くっきりとして微細な凹凸のある雲が、窓のすぐ外に浮かんでいることもスケールの認知を狂わせる。遠くの洋上を漂う紫色のにじみ。あれは鳥だろうか島だろうか。
やがて前方に、永遠に未完成の駅舎が見えてくる。だんだんと大きくなるのは接近しているせいばかりではない。