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雪雪/醒めてみれば空耳

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2004-03-13 帰郷しあう、ふたつの故郷

_ この頃は、本を読んでもあまりおもしろいと思うことがない。本のせいではなく、私が鈍っているせいなのだが。

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「言葉はなにをしている」「世界とはなに」「現実ってどれ」というテーマ性に惹かれて、たびたび神林長平を手にとってしまうのだが、どうしたことか身に迫ってこない。気になるが積極的に好きではない作家と、自分では思っていた。

最近知人が神林長平のファンになり、我が家の本の山のなかで神林を見かけると掘り出しては借りていく。貸しては返りを繰り返すうち次々出てきて、気がつくと十五冊発掘されていた。この分ではまだあるにちがいない。あまり好きではないはずだったのに、こんなに買っていたのかと我ながらびっくりした。「買わせる力量」も、枢要な作家的資質であろうけれど。

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数日前に古本屋で『絶対永久帰還』を見つけて買った。また買ってしまった。「帰還」という文字に釣り上げられてしまったのだ。

部数の多い『雪風』、『敵は海賊』の両シリーズ以外、神林は比較的古本屋で見かけない。買った人は売らないのだろう。『ラーゼフォン』はよく見かけるが、これは神林ファンでないアニメファンからの出物だと思う。

ところで『絶対—』は今まででいちばんおもしろかった。理由は明らかで、自分の恋愛を彷彿したからだ。言った憶えのあるセリフ、言われた憶えのあるセリフが頻出して、ひと事とは思えない。めまいがした。

恋、そして「帰る」ということ。

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恋愛は、「私はあなたの見知らぬ故郷です」ということを、伝え合う過程だと思う。すべての恋愛がそうではないにしても。