「とても信じられないわ。こんな話」
「信じるも信じないも君の自由だよ。あらゆる言葉はあらゆる意味をあらわすことができるから、全部作り話で、全部事実なんだけどね」
「その話ほんとう?」
「その質問が本気ならぼくの話は嘘」
「なら嘘ね」
「その結論は嘘」
「OK。正しい合言葉だわ。さ、入って」
「ごぼごぼごぼ」
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窓の外を眺めていると、着慣れぬ和装にとりあえず体を突っ込んだ感じの蜜柑が、心許ない足取りで通り過ぎて行った。
成人式だとすれば、果実としては破格の長命である。
匂いに魅かれてか、うすく眼を閉じた少年がひとり、少し遅れてついていった。