どうして誰もいないのだろう?この街には。
街の中心にある、白い不定形な時計塔。螺旋状に群れる天使たちに掲げられた時計をじっと見詰める。この針が、動いてみせるなら、この街がまだ生きている徴候だ。
動いているようでいないようで、しかとは見定められない。するうち、この時計が進むまいとするいとまに、時を追い抜かんとして急き立って経過しつつある「時ではないもの」がいることに気付く。
陽射しではない光を傾かせてゆき、今しもみずからの影を私に届かせようとして。
_ いる。
こんなにこんなにたくさん、「誰もいないこと」がいる。