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雪雪/醒めてみれば空耳

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2003-02-08 叙景集

_ 054

かたちなきものを狩る犬のごときものたち。

かれらが持ち寄った断片を、もとよりパズルのピースであったかのごとく、ひとつの、大きなかたちに組み上げてゆく。断片の意思に従い、収まるべくして収まる位置に。

ばらりと、散逸する。何度も。飽かず組み上げる。

どのかたちにしても残るおなじかたちの空洞。その空洞を恋い、そこを埋めるものを乞い、焦がれる。犬のごときものたちのごとく、空洞をあさましく嗅ぐ。

泣きながら目醒める。

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_ 055

「誰を待ってるんだい?」

「わたしに話しかけない人」

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_ 056

【クラクフトーン】

くつろぎ。余暇の音楽。亡命した独裁者の晩年の交友関係、もしくは友人。

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_ 057

獣脂のランプの溶けた飴のような光の下で老人は掌を見つめている。死んだ差出人からの手紙を読む読み方で。掌のかたちを決めたものの心が、吹き込んでくるのを待っている。

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_ 058

人桃が森の際を歩いている。こちらに気付くとよい匂いであいさつを寄越す。

視線のように匂いを送るのは、どういう技巧を使うのだろう?

習いたい。

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_ 059

思わずおまえを殺したくなるような悪口を言えたら命は助けてやる。おたがいに苛酷な条件だがな。

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_ 060

おおきな雪とちいさな雪が降る。おおきな雪はとてもゆっくり、ゆうらりゆらり落ちてくるので複雑で不ぞろいな結晶がよく見える。きらきらした都市をうす氷のように持ち上げて、おもてうらに貼り合わせたみたいだ。

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_ 061

「眼球のない少女のように見えるでしょうが、わたくしはエンジンです」

「弾痕のある果実に見えるでしょうけど、ぼくは修理工です」

「わしゃ徹頭徹尾作業台じゃ。あいさつは抜きでとっとと仕事にかかってくれんか」

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_ 062

森が乗り組み雲を頂いた船が海を連れて飛び立つ。