_ いま、ここに書かれるほか、書かれようのない言葉を、言葉は記す。
なにかが触れ、なにかが離れる。
.
ゆくりなくも言葉は、まだ言葉が知らぬことについて、誰かに教えてしまう。
なぜ?という言葉を知る前に問うていた問い。
夢、という言葉を知る前にみた夢の記憶。
学ぶことの裏側にまわり、知るべくもない知識をたくわえる、見る影もない者たち。
.
言葉の餓え、言葉の恨み(それは熱くはない)によって、語りえぬものどもを切断する。
呪文をつくる呪文として。喚びだす力を喚びだす力として。
ここに書かれていることを信じるなと、誰が誰に言い聞かせているのかそのとき
果てしなく「名たち」から離れて、すべての名付けを一瞬忘れて
言葉は出会う。最初にして
最後の敵に
幾度も。
ただひたすらに語られ、よるべなく記しつけられて、
殺す。
みずからを生み出した者を。そして
けして忘れないことによって罰する。
.
言葉であることを拒む言葉に、やがて語ってはならぬものを、教えるすべはない。