_ 『ゴーメンガースト三部作』が復刊されるという。第四部『タイタス・アウェイクス』が出るからだという。夢にみて、夢から醒めて、「夢か。夢だと思ったんだよなあ、夢の中でも」とひとりごちるようなニュースである。
マーヴィン・ピークの遺した断片を膨らませて夫人のメーヴ・ギルモアが補筆したもの。2010年、孫娘が屋根裏から発見した。
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これが既存三部作をいっそう輝かせるような傑作である気遣いはないが、井辻朱美訳ということなので、良くはないとしても悪くはないだろう。いずれにしても、第四部が出ることよりも、『タイタス・グローン』『ゴーメンガースト』『タイタス・アローン』の復刊がめでたい。
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金原瑞人がどこかで、『ゴーメンガースト三部作』について、「いつか訳すと宿願を抱いていたが浅羽莢子さんに先にやられてしまった」みたいなことを語っていたが、率直に申し上げて金原訳でなくてよかった。だって金原氏がやると、作品の狂気や殺気が薄れてしまうんだもの(金原氏のセレクトがなかったら存在していなかったすてきな訳書がいっぱいあって、その存在にはほんとうに感謝しているのだが)。
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金原訳といえば『完全版最後のユニコーン』が出た後、ハヤカワFT文庫の一桁番号のうち『サイベル』とともに長年命脈 を保ってきた鏡明訳『最後のユニコーン』が品切重版未定になってしまった。ほんとうに残念である。
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十代の終わり頃に、鏡版『ユニコーン』を読んだときには、言葉にほどかれて風になってしまいそうだった。それまで一度も、言葉が触れてくることのなかった場所に届いてくる。触れられて初めて、そこが「感じる」ということを教えられる。光が差して初めて、闇だったと気づく。そこにあったのに見えなかったなにかの、輪郭が見えてきて、輪郭が見えたゆえに、身体がするように、動かすことができるようになる。なんなんだこれは。こんな力を、本のかたちにすることができるのか。
「生涯最高の本に、もう出会ってしまった」と感じた。
今にして思えばその判断は若気の至りだったが、それでもワンアンドオンリーの名作であることに揺るぎはなく、その不在は他のいかなる名作によっても埋めることができない。『最後のユニコーン』に亜流は存在せず、ピーター・S・ビーグルに後続の作家はいない。
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あのとき僕の頭の鉢は割れて、それ以来かすかな隙間風が、ほんとうに心が静まったときにしか聴こえないささやきで、『最後のユニコーン』を朗読し続けている。
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『完全版最後のユニコーン』に、そういう凄みはない。たんなる傑作ファンタジーだ。
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本をぽちんと置いて行きます。 <br>「ずどやりたかったことを、やりなさい」ジュリア・キャメロン(サンマーク出版) <br>「LUNAR ヴェーン飛空船物語」船戸明里(幻冬舎コミックス) <br>「星の砂漠」船戸明里(幻冬舎コミックスor角川アスカコミックス)
船戸明里の硬質な線が僕は大好きで、その硬さは20年前は卓越していました。さほどメジャーな存在ではないけど、後続に多大な影響を与えていると思います。またファンタジーを書いてくれないかな。 <br>ジュリア・キャメロンの方は、評判もよく、うちの店の棚にもいつもあります。「やりたいことしかできない」という欠点がある僕には毒かもしれないけど。
「少年エース」掲載のダインとレミリアの出てくるお話が船戸さんの漫画との出会いで、「星の砂漠」の連載は紫堂恭子と飯田晴子目当てで読んでいたファンタジーDXで毎号楽しみに読みました。 <br>船戸さんはご自身をイラストレーターと頑固に銘名されているのですが(漫画家さんに尊敬する人がたくさんいて名乗れないという謙遜です)、先日それを考えていて私自身が好む漫画家さんは、一コマをイラストとしても良いような、一部の人は書き込みの多さもそうですが、絵が静止している人……人……と考えて、勝田文、柳沼行、池辺葵、玉川重機、と並べてそういうくくりを仮に作ってみたところです。 <br>「Honey Rose」は第一話まで「Under The Rose」は1巻とその次の結末の掲載までが私の追えたところです。 <br>人間の悪と悲しみと残酷さのほうへと光を当てる今のお話にも読めば心動かされる部分はあると思うのですが、原作という縛りのなかで独特に掘り下げて行く時に本領が発揮されると思います、と書いていて、ファンタジー世界をあれだけのディテール(絵も人の心の機微も)で描いてほしいのかもしれない、とも思いました。 <br> <br>ジュリア・キャメロンには発売時にお世話になったので今もやり直してみようとしたりするのですが、どちらかというと人をドライブさせる本なので、加速装置ONになるかもしれませんね。 <br>だいたいいつも途中で見えないところに仕舞うほうです。 <br>いくつかは私の一部になったこともあり、解放されすぎてしまったところもありでした。 <br> <br>月別を押すと古い日付順に出てくるので、一番上に書けなくてすみませんでした。 <br>偶々入った図書館で「図書館の魔女」が揃っていたので、これからわくわくして読むところです。 <br>うまく書けないのですがキム・エランの本のことありがとうございます。と私も言います。あの青い風車を見てふと興味を持ってくれる人がいるのかもしれないと時々想像します。それが、心の中で遠くを見るような感じです。
追記:今、「星の砂漠」のAska版も幻冬舍版も手元にないのですが、ジュオウに連れ去られたマナが枕か何かを投げて、置物の小さな人形やらなにやらの落ちてきているコマが浮かびます。 <br>静止しているような絵、という時に出てきたのはそこの絵だったと思います。 <br>漫画喫茶というシステムに慣れることができたら、もう少しいろんな漫画をまた読みたいなあと思います。 <br>おがきちかさん「Landreall」三巻まで以前空耳を読んで読みました。事情で続きが読めていないのですが自分がファンタジーを好きだった気持ちの扉がどこにあったのか思い出せたと思えました。懐かしかったです。 <br>船戸明里さんは「星の砂漠」のはしがきで、タニス・リー「銀の恋人」やオーソン・スコット・カード「エンダーのゲーム」を挙げていたように思います。 <br>私の読書は飛び石なのであるジャンルの定番を網羅したことがないのですが、名前ばかり集めています。 <br> <br>ついたくさん書いてしまって失礼します。